第12話 親子の愛と男女の愛

「父親がどんなに愛情を注いでも、母親にはかなわない。母親の子供への愛情は、父親の愛情とはかなり異質のような気がするけど、どう思う?」


「私は、物心がついた時から父親がいなかったので、比較できないけど、ママは私を命がけで育ててくれた。母親の愛って本当に一方的ですごいものだと思う」


「母親の子供への愛情って、お腹の中で芽生えて、育み、苦しんで生んだ、という実感からきていて本能的なものじゃないかな。父親の子供への愛情は、実感が伴わないけど、目で見ての愛おしさや責任感から来ていると思う。妊娠して生んだ母親と射精しただけの父親では根本的に感じ方が違って当然だと思う。母親は間違いなく自分の子供と認識できるが、父親は実感がないので本当に自分の子か確信できないのではないか。それが、懐いてきたり、顔が似てきたりすると少しずつ実感できるようになるのではないか」


「男女間では一方的な愛情ってありえるの?」


「一方的な愛情に片思いがあるけど、片思いはあこがれのような思いであって愛情とは異なるのではないのかな」


「一方的に、愛して、尽くすという、見返りのない愛情はいずれは破たんすると思う。なぜなら、高まって行かないから」


「男女間では、一方が好きになると、それに応えるように、相手も好きになっていく。好意を持ってくれる人に好意を持つというのは、give & take で、極く自然のことではないのかな。相手を愛さなければ、相手も愛してくれない。お互いに愛情を高めあっていくのが、男女の愛情と思う。恋に落ちるとはまさにこれだと思う」


「愛情とは少し違うけど、信頼関係も正に相互の信頼から成り立つ。信頼するから信頼される。職場でも部下を信頼しない上司は部下からも信頼されない。一方的な信頼関係というものは成り立たないし、ありえないと思う。でもどちらかから、信頼していることを表さないと信頼関係は築けないし、進展しない。これは男女間の愛情と同じだと思う」

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