第二位 文字数 700 ジャンル 『詩』『千の夜を越えて』
『私は忘れない、幾億の夜を越えても、あなたのことを――』
花は妖艶な香りを残し、鳥を惑わす。
色をつけ惑わされた鳥は感じたままに飛び、思いを風に乗せて私の元へ届けるだろう。
花鳥風月、四季の移り変わりをあるがまま美しく表現する言葉だ。今の私には存在しないものばかりで、自由に表現できる姉が羨ましく、あなたの存在に思わず嫉妬してしまう。
あなたと出会わなければ、叶わぬ夢を見ることもなかった。
あなたの存在を知らなければ、眠れぬ夜を過ごすこともなかった。
姉とあなたがいるだけで、私は一人取り残されたような孤独感を覚えてしまう。それがたまらなく怖い。あなたを一人占めできるのは月に一度しかないのに。
私の願いはたった一つ。
あなたといる時間をただ彼女より長く共有したい、それだけなのに――。
でも、成就しないことはわかっている。感情が追いついていないだけで、あなたが愛しているのは姉だともわかっている。
それでも私は千の夜を越えて、あなたに伝えたい思いができた。決してこの先、望んだ未来がこなくても、あなたを思い続けるだろう。
あなたがいるという証は私の瞳に刻まれているのだから――。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
一の夜を越えて、あなたの存在を知り、十の夜を越えてあなたの暖かさと姉の呪縛を知った。
百の夜を越えて、この思いが恋だと知り、千の夜を越えてあなたに伝えたい思いが生まれてしまった。
だけど、万の夜を越えて、あなたに伝える方法がないことを知り、億の夜を越えて、この恋は叶わないことを知ってしまった。
思いを伝えることもできず、私は今、
私には何も与えてくれないのに、
彼女には鮮やかな花も、
素晴らしい鳥も、
柔らかい大気も、
生き物を育む水も、
美しい季節、全て与えているのだから。
それでも私はこの思いを忘れない。成就するために次の夜を迎える覚悟を持ち合わせているのだ。
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