PART:4
たっぷり三時間、名乗りポーズ考案とポーズ練習に費やし、戦闘訓練は30分か1時間程だった。
それでもまだまだ新人である6人には非常に過酷なものであり、その場に座りこんでぜえぜえと息を切らしていた。
「つ、疲れたー……」
「魔法少女って意外にハードなんだねえ……」
修二はヘルメットを脱ぎ、水を飲んでいる友菜に言う。友菜もまた名乗りポーズを考え、何度も何度も実戦していた。
何故こんな訓練をするのかとザウルブルーが効いてみた所
「名乗りポーズと口上は戦隊の基本中の基本!」
「魔法少女にだって必要なもの!」
と返された。確かに戦隊や魔法少女にはテレビを始めとしたメディアや実際の目撃情報でも自身の変身後の名前を名乗る口上が必ず存在する。修二たちが戦隊に、友菜が魔法少女になった以上必要になるのだろうが、修二本人は名乗りは誰かが与えるものだと考えおり、自分で作るものだとは思っていなかったのだ。
「うん、こんなものだな。これで君たちも晴れて我々の仲間入りを果たしたわけだ」
「でも、どんな時だって油断は禁物だよ。今日教えたことを忘れないようにね」
「いや、でも初めてにしては中々っすよ。武器の使い方も短期間で形に出来ていたし」
「みんなお疲れさま~。疲れた体には甘い物がよくきくよ~」
ドリームホワイト達は、修二たちがへとへとになるほどの訓練にも全く疲れた様子を見せていなかった。さすがは先輩戦士だと感心した。
名乗り訓練の後の戦闘訓練では、それぞれの戦いに適した戦士たちが5人に戦い方を指導した。
武器が剣であるザウルイエローはレッドソードに剣技を教わり、ザウルブラックはブルードラゴンに格闘戦の極意を教わった。
ザウルブルーは武器を使った攻撃法をグリーンベンジャーから教えられ、ザウルピンクとシューティングゲームの能力を持つバーチャルピンクが拳銃を使って訓練した。
ザウレッドはドリームホワイトから戦隊のリーダーであるレッドたるもの、周りには常に気を配っておくよう言われた。
「いいか。我々戦隊は強い力を持っているが、それは個人の強さではなく全体の強さなのであって、一人ではむしろ弱いほうなのだ。5人の心を一つにした時に戦隊は本来の力を発揮する。ザウレンジャーのリーダーとなった君は、レンジャーを動かすために決める時はきちんと決め、仲間達の力を信じ、どんなにつらく苦しい状況でも最後まであきらめない事。それを忘れるな」
「はい」
一方の友菜は魔法の初歩中の初歩である「空を飛ぶ」という時点でもうてこずっていた。最初はサンフラワーとオキザリスが左右から抱えて「飛ぶ」という事を体感してもらい、それから実際に飛んでみたのだが、よくてふわふわ浮かんだ程度で、すぐに落っこちた。それから何度も繰り返してみて、ようやく他の魔法少女の後を追って飛ぶことが出来るようになった。ついでに簡単なものではあるが、「風を操る」魔法も教わっていた。最後の方では桜の花びら型の魔法のエフェクトを使えるようにもなった。
「うんうん。だいぶ形になってきたね、いいよいいよー」
「最後の風を使った魔法、桜の花びらが混じってて素敵だったわ~」
「お疲れ!」
「はい、ご指導ありがとうございます!」
「よし、今日のおさらいとしてさっき考えた名乗りをも一度やって今日は解散だ」
ドリームホワイトの号令で、ザウレンジャー5人は横一列に並んで先ほど練習した名乗り口上をもう一度とる事となった。
5人はそれぞれ顔を見合わせて頷き合うと、名乗りを開始した。
「紅の牙、ザウレッド!」
「黒き闘魂、ザウルブラック!」
「青い稲妻、ザウルブルー!」
「黄色い剣閃、ザウルイエロー!」
「桃色の弾丸、ザウルピンク!」
「強竜戦隊、ザウレンジャー!!」
その瞬間、5人のすぐ後ろで大爆発が起こった。驚いて振り返ってみると、5人の色と全く同じ色をした煙が立ち上っていた。
ああ、これネットで見たやつだ。何日か前に見たニュースサイトの写真に、写っていたのは三人だったが同じような爆発が起こっているのを思い出した。
「うむ、上出来だ」
「さあ次はチェリーちゃんの番だよ」
「は、はい!」
チェリーブロッサムは覚えたての魔法を使って風を起こして空から舞い降りて来たかのようなポーズを取り
「チェリーブロッサム!」
と名乗る。それと同時に彼女の周囲には桜の花びらが舞い散った。
家に帰った修二はドリームホワイトから言われたことを思い出し、今日会った四人の印象を纏めていた。
パキケファロサウルスのマスクのザウルブラック、賢次は熱血漢で最年長。肉弾戦が得意。
トリケラトプスのマスクのザウルブルー。一成は冷静かつ武器の扱いに長けることから臨機応変に対応できそうだ。
ステゴサウルスのマスクのザウルイエロー、佑磨は話していると周りが明るくなるムードメーカーとして力を発揮してくれそうだ。実際歓迎会で一番喋っていたのは彼だった。
アンキロサウルスのマスクのザウルピンク、由香は厳しい性格のようだが訓練中では周囲の状況を的確に判断・報告することに長けている。
そしてティラノサウルスマスクのザウルレッド、修二本人は
「前衛として活躍、かな……」
自分の事となると今一書き出せず、さらにリーダーの責任重大さもあって頭を抱えていた。カラーを変えてもらうわけにはいかないだろうかと考えていた時電話が鳴った。友菜からだった。
『修ちゃん!まだ起きてる?』
「うーん……寝てる」
『いや嘘でしょ、絶対起きてるって』
「ご名答。それで、何か用?」
『あのね、今日言い忘れちゃったことがあって、突然選ばれちゃったけど、私精一杯魔法少女活動頑張るから、修ちゃんも戦隊活動、頑張ろうね!』
「あのさ、お前って随分と呑気だよな。ある日突然変身できるようになったら、普通はまず驚いたり、少しは迷ったりするもんだろ」
『だって嬉しいんだもん。ずっとあこがれてた魔法少女になれて』
「まあ当の本人が嬉しいならそれでいいか。実は、俺も少しだけ嬉しかったりするんだがな。退屈しなくて済みそうだし」
『本当?よかったあ~。じゃあもう寝るから切るね。これからよろしく!』
「おう」
それだけ言って電話を切った。幼馴染の元気な声を聴くと、先ほどの悩みはどこかに消えて行ってしまった。
それ以降、チェリーブロッサムとザウレンジャーは訓練以外にもなんとなく一緒になるようになった。友菜は休憩時間などに修二以外のザウレンジャーのメンバーとも積極的に会話をするようになった。最初はほんのわずかなだけだった会話は日を追うごとに長くなり、僅か一週間にして6人は友人といってもいい間柄になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます