【為替レート】

 そのまま言い合いになった双子を笑顔で眺めながら、琴美はぼんやりと別の事を考えていた。

「どしたの?」

 急に黙りこくった級友に気付いた羽音は、少し心配そうに聞いてみた。その言葉があまりに自然に入ってきたので、琴美はつい頭の中の事をそのまま口にしてしまう。

「うん……どれぐらい儲かったのかなぁって……あっ!」

 そして、すぐに自分が何を言ったか気づいて、気マズそうな顔をする。

「一万二千って、言ってたよ~」

 が、そんな琴美の様子など全く気に止めないで、音羽はほんわか笑顔であっさり言った。

「ちょっ! おとはっ!!」

「…………一万二千?」

 またもやなんの躊躇ためらいもなく答える姉に羽音は慌てたが、琴美は不思議そうに首を傾げた。株で生計を立ててる人が、祝杯を挙げる程の金額とは思えなかったからだ。その表情で疑問を察した羽音は、大きく溜息をついてから仕方なさそうに補足した。

「……ドル、ね」

「ド、ドル!?」

 今朝、ニュースで見た為替レートを思い出して、思わず驚嘆の声を上げる琴美だった。

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