【気になる事】

ところで……」

 ハンバーグをさらに一口頬張ったところで、琴美は思い出したように口を開いた。

「音羽ちゃんと羽音ちゃんのお父さんって、何やってる人?」

 それは何気ない疑問だった。なので、軽い気持ちで聞いたつもりだったが……、

「あっ……」

 途端に羽音の顔色が変わった。躊躇するような仕草で目を泳がせる。

「ん~?」

 しかし、それとは対照的にいつものほんわか笑顔を浮かべて、音羽は呑気に言った。

「ウチ、お父さん~、いないよ~」

「おと……!」

「えっ?」

 慌てて止めようとしたが、もう遅かった。琴美を見ると瞳孔を開き、口をわなわなさせて固まっていた。諦めたように肩を落とした羽音は、仕方なさそうな口調で言った。

「……シングルマザーなの」

「…………」

 完全に地雷を踏んでしまい、どうしたらいいのかわからなくなる琴美だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る