【乙女の妄想】

「お、おとはが着てる服の方が可愛いじゃん」

 思ってもみなかった展開に、羽音はそう返すのが精一杯だった。

「ううん~、そっちの方が気に入っちゃった~」

 が、音羽はほんわか笑顔で首を横に振って妹の言葉を否定する。

「だから~、それにする~」

 それから慢心の笑顔を浮かべて、嬉しそうに言った。

(おとはが、あたしの着てた服を着る…………?)

 羽音は動揺した。幼い頃こそ、双子の衣類は下着も含めて共用だったが、小学生高学年ぐらいになると服の好みも変わってきて、さすがにお互いの服を貸し借りするようなことはなくなった。なので、例え試着しただけとは言え、自分の着た物を大好きなひとが着ることに羽音は妄想せざるを得なかった。

(わぁ……どーしよう……匂いとか付いてないかな…………)

 それは、なんてことはない事のはずなのに、想像しただけで頬が熱くなる。好きな相手ひとが自分の着た服を着てくれる。それは恥ずかしくもあり嬉しくもあった。

「べ、別にいいけど……」

 なので、今にも湯気が出そうなぐらいに顔全体を真っ赤にしながら、頷く羽音だった。

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