【就寝】

「おやすみなさい~」

「おやすみ」

 夜も更けて、音羽と羽音はそれぞれベットに入った。ベッドは二階建てで、上に羽音、下に音羽が寝ていた。

(……おかしかった)

 仰向けで、胸まで布団を掛けて後頭部に両手を回した羽音は、天井をぼーっと眺めながらさっきのことを思い出してた。

(あんなおとは見たの、初めてかも)

 しっかり者で大抵の事には動じず、いつものほほんとしている姉が、あんなに狼狽した姿は、ちょっと記憶になかった。

 十四年間、一緒にいて、まだ自分の知らないところがあったのは純粋な驚きだった。しかし、それ以上に、大好きなひとの新しい表情が見られたことが嬉しかった。

「クスクス……」

 自然と頬と口元が緩み、にやにやしてしまう。心の中は幸せな気持ちで満たされていた。

(ちょっと、得しちゃったかなぁ)

 その幸せを噛みしめながら、布団を被り直すと眠りにつく羽音だった。

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