【突然の告白《カミングアウト》】

 羽音や周りから浴びせかけられる疑いの眼差しを豪快にスルーして、音羽は人差し指を立てるとほんわか笑顔で説明した。

「ほら~、好きになったら~、あ~んな事やこ~んな事~、したくなるじゃない~?」

 そして、小首を傾げると、柔らかな物言いで聞いた。

「それとも~、夕貴ちゃんの好きって、その程度なの~?」

「そ、そんな事ない!」

 それは決定的な一言だった。頂点に達した怒りに任せて夕貴は絶叫した。

「ボクの方が、部長の何倍も何百倍も遠野の事が好きなんだから!!」

 講堂内がシーンと静まりかえる。

「あっ……」

 しまった、と思ったが、もう遅かった。

「…………」

 ちらっと藍子を見ると、頬を染めて恥ずかしそうに俯いていた。その隣で音羽が困ったような笑みを浮かべていた。

「わたしは~、主人公の事を言ったつもりだったんだけど~……」

 このまま消えて無くなりたい、本気でそう思う夕貴だった。

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