【私利私欲】
「
眉をつり上げて、夕貴は憤慨した。しかし、音羽はいつものほんわか笑顔を崩さずに、のほほんと言った。
「そこは~、主人公の心情を汲み取って~」
「汲み取っても、そんな事はしないから!」
その態度が夕貴の怒りに油を注いだ。相手が部長である事も忘れて、ありったけの声で怒鳴りつける。音羽の隣では、藍子がどうしたらいいのかわからず、おろおろしている。
「今のはどう見たって、部長が遠野にキスしたかっただけだろう!?」
音羽を指さした夕貴は、核心部分を突くようにびしっと言った。
「…………そんな事無いよ~」
それでもまったく怯む様子を見せず、音羽はおっとり口調でにっこりと微笑む。
しかし、周りの部員達や舞台下からそのやり取りを見ていた羽音は見逃さなかった。音羽が一瞬、考え込んだのを。
(いや……絶対、そうでしょう)
稽古にかこつけて自分の欲望を満たそうとした音羽に、怒るよりも呆れる羽音だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます