バグゲームからの異世界召喚

3G27N

第01話 召喚

 ここに、1本のゲームソフトがある。

 【F1-ファイナル・ワン-】

 かなり、古いカートリッジタイプのソフトだ。

 一見レースゲームかとも思えるが……。

 勇者の魔王退治という、ありきたりなゲームだ。


 たが、このゲーム……致命的なバグがある。

 なんと、魔王城に魔王が居ないのだ。(笑)


 その為、

 ユーザーからの大量のクレームによる

 返品を受けて、弱小だった会社は倒産している。

 それでも、返品しなかったユーザーもいた。


 とあるゲームショップの特価コーナーに、

 世界で最期の1本があった。

 5本で100円の頭数で、

 彼、綾崎 鷹斗が購入していった。

 彼はステータスカンストまでプレイしたが、

 魔王が出ない事をネットで知る。

 再度ショップに持っていったが、

 値がつかないと言われたので、

 棄てることにした。



ー「陛下! 召喚に成功しました」


ー「そうか……」


 なにか、聞こえる。



「目覚めよ」


 眼を覚まし辺りを見渡す。

 神殿の中心の魔方陣の中央に、

 うつ伏せに倒れていたようだ。

 眼の前に王様のような人がいる。


「ここは、どこですか?」


「我はこの国の王ブリティッシュである。

 この度は、

 貴公を我がプラズニール国に召喚した。

 まずは、貴公の名を聞かせ願いたい。」


「名は……ありません」


「!?」


 王と側近が小声で話あっている。


ー「名前がない? どう言うことだ」


ー「申し訳ありません陛下、

  呼称が無い世界なのかも知れませぬ」


ー「呼称が無い?

  どれステータスで確認するか」


「名も無き者よ、

 すまぬがステータスを見させて貰う」


 兵士が1m四方の金属トレイを持ってきて、

 黒い液体を流し込んでいる。


「では、宮廷魔術師ムストラ頼む」


「かしこまりました、陛下」


 ムストラと呼ばれた男は、

 黒装束を見に纏っていて、

 顔はよく見えないが、

 声からしてかなり年いってると思われる。

 ムストラがトレイの前で念じると、

 トレイの黒い液体に変化が生じ、

 ステータスが表示された。



┏━━━━━━

┃職業:勇者 

┃お金:9999

┃レベル:20

┃HP:1050

┃MP:1050

┃筋力:105

┃魔力:105

┃耐久:105

┃技量:105

┗━━━━━━


ー「なんとも、幼稚な形式だな……」


ー「陛下、職業が勇者とありますが

  ……これは……」


ー「これが勇者のステータスか?

  そこらの冒険者より劣ってるぞ……」


ー「陛下、今回の召喚は、

  失敗だったのでしょうか?」


 勇者からはステータスはみえない。

 王と魔術師は相談し終えたようで、

 渋々口を開いた。


「呼び出しておいて申し訳ないが、

 貴公のステータスを見る限り、

 我らの依頼を受けられそうにない。

 此度、呼び出してしまった事に謝罪しよう。

 そして、

 今より貴公を元の世界へと帰還いたす」


 勇者は一気に顔が青ざめた。


-あの世界に戻されるのか……。


 そして、帰還の魔法が行使された。


『バチィ‼』


 突如、大きな音が響き渡り、

 ボクの帰還は失敗した。


「へ……陛下、

 この者の世界が消失しております」


「なんだと⁉」


 この者がいた世界はすでに消え失せている。

 というより、

 ごみ処理場で砕かれました。

 そう、この勇者は【F1】の主人公だったのだ。

 王国側はゲームソフトより、

 この者のを召喚したのだった。

 王や魔術師にゲームの世界などわかるはずはない。


 だが、勇者は知っていた。

 自分のいた世界が偽りゲームであることを。

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