A6-4
葵は落ち着きなく、ぴょこぴょこと
「おっと、どうやらカノジョも限界のようだよ?」
美羽が葵の頭をポンポンと
葵は意に
「よーし。ならば、本命が
珠姫は葵の背中に手を置いた。
「むー。鋭一、たのしそう……」
「葵ちゃん。あそこに行きたいのかい?」
「うん」
葵は
「でも、
「あはははは。なるワケないじゃーん」
声を落とした葵の心配を、珠姫は笑い飛ばした。彼女は葵の頭をわしわしと
「葵ちゃん、あなたは鋭ちゃんの、何だっけ?」
「…………こいびと」
「だったら、葵ちゃんの行っちゃいけないタイミングなんて、ありませーん。……と、いうわけで」
「?」
「──行けっ」
どん、と珠姫は葵の背中を押した。バルコニーの入り口に小さな体が飛び出す。それがきっかけとなって、葵も
「じゃあ……行く!」
葵の目が、
「だから、このタイミングでのスキル使用なら──」
解説を続けていた鋭一は、その気配に気づくのがコンマ一秒
「…………っ、葵!?」
鋭一は頭を後ろに
久しぶりに出た。
「ちょっ……今のはマジあぶなかったぞ!?」
「鋭一、やっぱり
葵は少し
「は、はは……。やっぱアンタら、すごいわ」
その
「…………ずるい」
すこし不満そうに、
「あかりちゃん、ずるい」
「へ?」
アカリは何が何やらわからずたじろぐ。葵はぷくーっと膨れたまま、
「鋭一と仲良くして、ずるい!」
「あ、葵? 落ち着けって。別にこれは、そういうわけじゃ──」
鋭一は
「鋭一も!」
「……なに?」
「あかりちゃんと仲良くして、ずるい!」
「ええっ、そっちも!?」
葵はびしり、と人差し指を向けた。
葵は
「は……ははははは」
その様子に。アカリは、思わず笑いがこぼれた。
葵はもう完全に、アカリを身内に数えていてくれる。これは、そういうことじゃないか。
「ごめんね、葵ちゃん。
彼女は二人から
「ありがと、鋭一。おかげで勉強になったよ。明日はまた『敵』だけど、それが終わったら、また──」
別れを告げるように言いかける。が──
「……なあ」
鋭一は、そこに口を
だから、せっかくなので今、言ってみることにした。
「その『敵』っていうのさあ……やめない?」
それが今の鋭一には不思議だった。今日、この場だけでもアカリは何度かその言葉を使っていたが、鋭一にはずっと
「え。だって、明日は──」
「わかるけどさ。どっちか勝ったら、どっちか負けるし。でも……敵なのかな? なんていうか、そこまで
「う……」
「別に俺たち、
そこまで言って。鋭一はあることに気が付いて言葉を止めた。
その
「なんだ。それ
鋭一が笑って指さしたのは、あの日、三人で
「あッ!? こ、こここれは……!!」
その
「違うのよ! これはね、アンタらの顔で戦意を高めるためっていうか! そ、そう! 私は理想のアイドルになるには勝たなきゃいけないんだから! 敵だから貼ってるの、だから──!」
「あ……アカリ!? そっちは」
それが不幸だった。夜。
「──あっ!?」
アカリが段差に足を取られる。葵も反応するが位置が遠い。これは……間に合わない? コンクリートの
だが──
何秒待っても、その衝撃はやってこなかった。彼女を受け止めたのは、サドンデス王者の、二本の腕だった。
「つッ…………!」
鋭一はアカリをかばうように受け止めた。アカリは、無事だ。
痛みに顔をしかめているのは、鋭一のほう。
「いてぇー……足か? ちょっとひねったかも」
「あ……ご、ごめんなさい……」
混乱の冷めたアカリがしゅんとして謝る。
「いやいや、いいって。これで分かっただろ? 敵にこんなこと、してやるもんか」
鋭一は笑った。アカリもその言葉に、
「そう……だよね」
「明日どうなるか、わかんないけどさ。やっぱゲームだし、楽しくやろうぜ。俺は、プラネットは、
「……うん……」
アカリは
彼女の胸には、新たな感情が去来していた。
明日戦うかもしれない鋭一、葵。もう「敵」ではない彼ら。
その彼らと。私はプラネットの戦場で、どう向き合えばいいんだろうか──?
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