第16話 ダイガクビョウインのセンセイの言ったこと

「それではCT撮影しますが、

 まずこちらにお名前を書いて予約を取っていただきます。

 時間までお待ちいただいてからになると思います、今日中に撮れますが。」



「何時間でも待ちます、よろしくお願いします。」


そういって、ママとパパは何度もよろしくお願いします、

を繰り返して、僕を置いてっちゃった・・・


僕ね、すごくすごく悲しかったの。

なんで僕置いてくの、って。


でもね、またちっくんされて、眠くなっちゃって、

それから先は覚えてないんだ。


次に目を覚ました時は、ママとパパがいた。


ああ、よかった。

僕、やっぱり、なにも悪いことしてないんだよね?

僕、ママとパパとセドといっしょにいられるんだよね?


ママは、まだ眠そうな僕を、なんとも言えない目で見てたっけ。


そのとき、うけつけのひとに呼ばれて、

ママとパパが僕の入ったきゃりーを持って、

しんさつしつへと入ってった。


はじめはね、しんさつ受ける前はね、

「今日は初診だし、元気そうだね~!」

「これなら、どっちかって言ったら鼻炎とかじゃないかな。」

って。


言ってたセンセイだけど。


「悪性腫瘍でした。」


そのセンセイが言ったことも、難しくて僕にはさっぱりだった。


それを、パパとママが聞いてくれた。



「CTで撮った画像を見ていただくとわかりますが、

 もう右側の鼻骨、溶けてなくなっちゃってました。

 この部分が悪性腫瘍ですね。

 幸い転移はしていないみたいです。

 治療法のひとつとして、放射線治療があります。

 ただ、うちではできないので、別の病院になってしまいます。」


そしたら、ママが我慢できなくなって、ひとことセンセイに聞いた。


「痛いんでしょうか。


 それは、痛いんでしょうか。」


「痛いと思います。」


いたい、のかな、僕。

これがイタイ、っていうのかな。


ダルイ、っていうコトバはね、何回か聞いてたから。

僕、わかるけど。


イタイ、っていうのと、ダルイのって、違うみたいだ。


そしたらね、またママの目から、おみずが出そうになってたんだけど、

ママはおみずを出さないようにして、


「わかりました、少し考えてみたいと思います。」

って、言ったんだ、きっぱりと。


パパは何も言わなかったけど。

なにかを言いたいんだなってことが、僕にはわかってた。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る