第11話 なにかおかしい

昔から僕、一度食べたものをもどしちゃうことがあった。


ママはそれを何事もなかったように、ふいてくれてた。

それが当たり前だった。


「またけぽりんしたの、がっついて食べるからだよ~。」

って、笑いながら。


セドも同じことがあったけど、それは、

セドナが自分のからだをなめなめして、きれいにしたときに、

飲み込んじゃったケダマ、ってものをハク、らしい。

(ママが言ってた。)



ただ、僕がハクものって、ごはんもだけど、

最近へんないろのをハクようになった。


いつもだれもいないところでハイテタ。


でもある日、パパのイレモノにハイチャッタ。

そしたらママがいて。


ママ、びっくりしたかおしてた。


パパが帰ってくるのを待って、おやすみの日にびょういんにいこう、

って、話をしてた。


「そういえば、いつからかわからないけど。

乾いた咳が出るようになったよね。

あれもなんか関係があるのか聞いてみよう。」


そしてね、これもちょっと前に、ぼそっとパパの前で、

ママが言ってたんだ。




「リオ、なんかかわいくない顔してる。」




僕のかおをみながら、ママがそういったんだ。

あのね、まちがえないでほしいんだ。


けして本気でかわいくない顔、って言ったわけじゃないと思うんだ。


あれから僕とセドナは、だんだん色がついたとこが白くなってたり、

いろいろと変わっていったけど、パパとママはそれでも、

僕とセドナを相変わらず、つかずはなれずの心地いい距離感においてくれてたし、

とつぜんママは僕のおなかにすりすりしたりしてた。


ママはわりと思ったことをズバッという反面、相手の立場に立って、

これは言わないほうがいいと思うことは言わないようにしてる、

ってことも、僕にはわかってた。


そんなママが、かわいくない顔してる、ってパパに言ったとき、

パパは僕を抱っこして、じっと僕を見た。


「鼻のとこが腫れてるっぽいな。」


そういって、パパもママも、それほど問題ないだろうって気持ちでいたんだ。


もちろん僕も。


だって、ふつうだったんだから。


そしておやすみの日、僕を乗せて、ひさしぶりのびょういんまで行った。


「こんにちは、どうされましたか?」


「なんか鼻のスジらへんが腫れてるみたいなんです。」

「こないだは吐血もしちゃってました。」


ひさしぶりのせんせいは、僕の顔をじっくりみて、


「そうですね、腫れてますね、一応レントゲン撮りましょう。」


って。



ママもパパも、そんなカナシソウなかお、やめて。

いつもみたいにわらってて。


僕はそれが一番なんだから。


「すいません、よろしくお願いします。」


パパとママはおなじことばを言った。


僕はそのまま、パパとママが入ってきたどあ、と、違うどあ、

から運び出されたんだ。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る