ロスト・アンド・ファウンド

汚れた詩

ロスト・アンド・ファウンド

☆イントロ

ビルの割れ目から見える青空。昼下がり、3号館裏の誰も来ないスペース。

僕は一人ベンチに座りながら、パンを食べている。耳にはイヤホン、傍らには本が広げられている「饗宴」。[僕にキャメラは近づく。大きくなる音楽の声量]


むしゃむしゃ。

むしゃむしゃ。

食べ終える。


太陽が移動し光が直接挿す。[音楽はフェードアウト]。本を置き、イヤフォンを外す。陽射しが眩しい。


僕は太陽に手をかざす。手を伸ばして何かを掴もうとする。握りしめた拳を開く。無。そこには、なにもない。僕は疲れた顔で首を振る。


☆第一章(一方的な出会いは突然に)

いつものベンチ。いつもと同じように僕はイヤフォンを耳に挿して音楽を聞き、傍らに本を置いている「The Art of Loving(フロム)」[音楽がしつこくないくらいに聞こえる]。


女が前を通りかかる。[音楽は優しいものへと変わり、限りなく小さくなる]ビル影から出てきた女の顔に日差しが当たる。女も手を顔をもっていく。しかし、手は顔から伸び太陽へと伸ばされる。手は空をしばらく泳いだあと、落胆したように力なく垂れ下がる。


僕は彼女に興味を持つ。


自分と同じ行動をした彼女には何か僕と通じるところがあるのかもしれない。何か他の女とは違う何かがあるのかもしれない。



☆第二章(ストーキング)

僕は彼女をストーキングする。[緊張感、罪悪感と共に]


ストーキング①

あっ、この前の彼女だ。気付き、意識、以上。


ストーキング②

あっ、また彼女だ。毎日この時間はこの道通るのね。今まで気づかなかったけど。


ストーキングしようと思うが、ベンチから立ち上がれず、失敗。


ストーキング③

ベンチ前を通る彼女の後を軽く尾行するが、ここで罪悪感に押し潰され、断念。


自室①

語り。深まるストーキング欲求を僕はキャメラに向かって語る。自己中心的、支離滅裂な内容。


ストーキング④

罪悪感を感じつつも彼女を学館までストーキングする。前回よりストーキング出来た。ストーキングの悦びを噛み締める。


ストーキング⑤

学館の先までストーキングし、ラウンジで集まる集団に入っていく彼女を確認。


ごめんいつもこの時間は授業で遅れて

__女

いいって映画より単位さ

__映画サー員A

それより今度の撮影の件だけど

__映画サー員B

あぁ、それね。いつになったの?

__女

来週の日曜時間空いてるかな?他に奴らは全員確認済みなんだ

__映画サー員B

別に、問題ないけれど

__女

ならよかった。じゃあ話はこのシーンに戻るんだけど...

__映画サー員A


会話から彼女が映画サークルの人間であることを知る。また、次の撮影の日時を聞く。ここらで罪悪感の意識は身を潜め、ストーキングはちょっと刺激的な日課の散歩のようなものになる。



ストーキング⑥

彼女の映画サークルの撮影場所をストーキング。女は女優として参加。陳腐な三文劇を披露。[BGMはお決まりのように使われるピアノの音階]


君の瞳に恋してる

__男優

見つめ返す女

ジュテーム

__男優


見ている僕。ふーん、程度の顔。


撮影が終わって映画サークルの人間が集まっている。


わいわい。

女は輪の外。ぼっと虚空を見つめる。


咲!こっち来て


映画サークルの三女が声をかける。


僕の自室②

名前、咲って言うのか...咲っ!はぁはぁ、、、うっ

__僕


ストーキング⑦

僕はまた女の撮影を見に行く。


ゴニョゴニョ...

__男優

...(ぼーっとしている)

__女

カット!カット!

__監督と思しき学生


女は意識が明後日の方に行っているらしく、注意されている。


ゴニョゴニョ...

__女

ゴニョゴニョ...

__監督


仕切り直し。

君の瞳に恋してる

__男優

見つめ返す女

ジュテーム

__男優


僕、苦虫を噛み潰したような顔。


ストーキング⑧

僕はまた彼女の撮影を見に行く。僕はもう保護者みたいな面構え、そこには一切の罪悪感らしきものは見受けられない。


彼女はなんだか疲れているようだ。笑顔にも力がない。彼女は休憩時間にみんなから離れベンチに座る。


籠の中の小鳥....

__彼女は呟く。


僕はニコニコしながらその場を立ち去る。


僕は今日、彼女が自分の本当の居場所はここではないと感じつつ、今更抜け出して全てをゼロから始めるようなことは出来ない微妙な状況にあることを理解した。


自室③

咲っ!咲っ!やっぱりっ、僕らは!......ううっ!!ううっ!!あっ![途中から、曲:イントロ]


夜の街①

高揚する気持ち!走り出す![曲:主部]

夜の街を爆走する僕。


偶然彼女の姿を見つける◯

男といる。距離が近い。親しげなようだ。

僕はブチ切れる。


真顔でその場を離れる。重い沈黙。



俺の自己完結していた世界は、ここで決壊。淡い恋は愛へと結実することなく、怒り、憎しみの方向へとスライドしていく


夜の街②

グゥっ...ギュルルゥゥ!!

怒りに任せてめちゃくちゃに走る!鬼の形相![Can't Stop Loving Youとか流したらエモいのでは?]


やっぱり!やっぱり!どうつもこいつも

!クソっ!クソっ....

__シャウトする僕


僕は、ゼェゼェ言って止まる。

でも...うっ...うっ...

__僕


☆第三幕(邂逅)

自室にて虚空を見つめる僕。目は次第に焦点が定まるが、しかしその瞳は狂気の色を帯びている。


ヒヒヒっ、クヒっ

__僕

手には映画祭りのビラが。



僕は映画祭りに乗り込み、看板に糞を投げつける![ゴジラのテーマ?もしくはデスロックとかそこらへん]


前列に並んだ監督たちにビンタで暴行。ピシピシっ。ピシピシっ。ピシピシっ![曲、徐々にフェードアウト]


壇上から惨劇を見守る女[目には涙が。突然の開放、戸惑いと悦び]。女は壇上で司会進行補佐をやっている。


二人は対面する。壇下から始まり、僕は壇上に移動。女に近づきながら混沌の中、女を罵倒しながらも、女への愛を叫ぶ。


おい咲っ!このクソ!人の気持ちを弄びやがって!馬鹿野郎!許さねぇぞ!裏切りやがって!クソっ!咲!君はなぁ、君は僕を知らないかもしれない!でも僕は誰よりも君のことを知ってる!君の親よりも!下手したら君自身よりも、だ!なんでだと思う?!だってね、僕、君のことをを愛してるから。君以外のことはもう頭にないから。僕自身のことなんてどうでもいい....起きても寝ても君、君、君なんだ!これが愛以外のなんだっていうんだ!でもこのクソ!裏切りやがって!僕の気持ちを弄びやがって!性の悦びを知りやがって!なぁ、どう弁解するんだ?なぁ?許せない、許せないぞ!ゆ、る、せ、な、い!...んっ?オイやめろ!やめろどけ!ああっ!あ!グふっ....


彼女まで一歩のところで俺は取り押さえられ力尽き、口から泡を出して気を失う。倒れる。


遠くから聞こえる。


待って!

__女


☆エンディング

僕は目覚める。気がつくと目の前には女。膝枕。果たしてこいつはどこの誰だろう。


不思議です。初めてあったのに、私貴方のことを.....

__女は僕に囁きかける。柔らかな、安心感に満ちた顔。聖母?


ふらふらと立ち上がる僕。女の腕を振りほどく。払い除ける。誰だよお前?僕はもう行かなくちゃならないんだ。


戸惑う女。


僕は定まらない焦点のまま、宛もなく彷徨う。右手は光を求め前へ、前へと突き出されている。


一人残される女、血の涙。決意の瞳。[エンディングの壇上の場面は聖書っぽくしましょう]

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ロスト・アンド・ファウンド 汚れた詩 @drydrops

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