咲かない小百合の花
………眩しい…朝が来た。今日も僕は死んでなかった。ベットの周りを見ると気付かない間にまた、吐いていたのか、花びらが散乱していた。早く片付けなければ…急いで花びらを片付ける。この花びらは感染病を起こすから…。
もう、18になったのにろくに就職もせずに何を毎日小説ばかり読み漁っているのだろう。フラりとまた、外に出ては周りの視線が気になるようになった。何時、あの吐き気に襲われるか分からない恐怖…死んでも良い…逆に死にたいと思う気持ちを拒絶するかのように花は次第に増えていく。
…嗚呼…そろそろかな?とちょっと胸を踊らせながらも吐き過ぎて体力が無いのか、千鳥足になりながら歩く。そうするとまた、急な吐き気に襲われて。路地裏に行き、吐き続ける。
……死にたいと言ったけれど死は怖い。気持ちが悪い…。そうしているうちに唾液と共に薄桃色の椿の花が…吐き出されて。
これは嫌いだ。死にたい死にたいと言いながらも拒んでいるのは自身で分かっていた。
死は怖い。だけど、死なないと君に会えない。
どんなに僕が努力をしても…どんなに僕が誇りのある地位を貰っても…その世界に君はもう居ないから。僕から会いに行かなきゃ…。
友人から最近変な痩せ方をしているから病院に行ったほうが良い…と勧められた。でも、病院なんかに行けば、僕は隔離されて死にたくても死ねなくなる。それが一番困るから…
病院?医者?信用出来無い……。
僕の一番大切な人を奪い、何事も無かったかのように一分一秒を過ごしているなんて。
考え事をしているとまた、気分が悪くなり、吐き続けていた。でも、吐くのもなかなかキツイ。
このまま窒息死しないかな…とボソッと呟きながら。結局死ねなかった。いや、死なせてくれない。僕はこんなに君を恋焦がれているのに。
馬鹿げている。知ってる。きっと僕が死んでも君は喜んでくれない。
………君は優し過ぎるから……
それとも僕を叱ってくれるのかな?君は穢れを知らないから。
………君は純粋過ぎるから……
本当に困る。好きだった…だから何時まで経っても…君を忘れる事なんて出来ないんだ。
………………だから、今日もあの病に襲われて花びらを散らせているよ…愛しい君を思って…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます