あとがき

あとがき

 八九十話にて『魔闘拳士』、完結です。最後の一行は当初より予定していたものでした。


 ずっと読んでくださっていた読者の方は不思議に思われたかと思います。この物語には当たり前に有るべきものが無い、と。

 暦の設定に関しては迷った部分ではありました。有ったほうが時間の経過については説明が簡単です。しかし、暦というのは国の権威に繋がるものです。例えば、日本でさえ未だに公文書でも国際的には通用しない元号が採用されています。


 この物語のように多くの国々を渡り歩く内容となると、それぞれに国の起源に基づいたり、時の為政者に纏わる暦がなくては奇妙な話になります。

 それを設定するのも不可能ではありません。ですが、文中で採用して理解が得られるものでしょうか? 正直、難しいと思います。


 では、統一歴を用いれば良いのですが、これが一神教であれば何らかの起源を設けるのも可能です。しかし、魔闘拳士の世界観では多神教、しかもそれぞれの国で別々の神を奉じて国教にするスタイルです。

 統一起源を設けるのが難しい以上、国々に暦が存在しても敢えて言及しない方向にしました。


 終盤では神使の一族ゼプルが表舞台に顔を出したことですし、平穏が訪れ情報化社会も実現しています。なので、大陸の統一歴となる「ゼプル歴」が流布されたものとして物語の最後に持ってきました。

 余談ですが、この後の大陸では上一桁の二万を省略して、ゼプル歴として用いられるようになる設定です。



 さて、本編の内容に関してです。

 僕としては当初よりの目的であったエピックファンタジー、英雄の誕生から一時代の終わりまでを描く目的は達成出来たものと思っております。創作者として守りたかった三つも一応遂行出来たと考えています。

 それは「第三者視点で自作を読み、きちんと読み物になっているか確認すること」「読者に伝わりやすい文章になっているか監視し、努力を怠らないこと」「ちゃんと終わらせること」です。これは縛りの少ないネット小説だからこそ可能であったと思います。


 残念ながら出版業界の方の目に留まる事は有りませんでしたが、それは政治色・宗教色の強い展開、主人公が平気で人を殺める点など、前提からして現代の風潮とは離れた内容であった部分も大きいと思います。

 逆に流行りの要素に欠ける部分は多いとも承知しています。それが何かは言わぬが花なので、言及は避けるべきでしょう。

 プロの方々は続きを書きたくとも書けない現実というのがおありでしょう。満足のいく終わりを迎えられたのは創作者として幸せだと思っています。



 ここまでお付き合いくださった読者の方々には感謝の言葉もございません。長い長い物語ですが、多少でもお楽しみいただけたとすれば作者としては感無量です。

 次回作は全く異なる作品をと考えていたのですが、思い付きがありまして『魔闘拳士』の世界観を使ったスピンオフを書きます。かなりテイストの違う作品になると思いますが、もし引き続きお付き合いいただけるのでしたら幸いです。


『ステインガルドの魔犬 ~ただの犬だけど、俺は彼女の相棒です~』

 2019年1月13日19時より連載開始です。

 作者ページからどうぞ。


 この辺りであとがきも締め括りたいと思いますが、同時に一遍だけ続きを更新いたします。そういったものを蛇足と感じられるでしたらここで閉じてください。


 ありがとうございました。


 2018年12月19日  八波草三郎

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