第5話 ドラゴンヴァンパイアと新大陸
第5話 ドラゴンヴァンパイアと新大陸
俺が初めてライトフレアを放ち大地を抉り取り、巨大なクレーターを作ってからおそらく5年くらい経った。
この5年くらい……というのは俺が途中で年月を数えるのが面倒になった為、数えるのを止めたからだ。
だからだいたい5年くらいたったかな〜? という曖昧な感じ。
で、この5年くらいの間、俺はただひたすら前に進み続けた。
その途中で色々なことがあった……と言いたいところだが、実際は殆ど代わり映えのしない毎日だった。
あった事といえば新しいモンスターを何種類か遭遇したのと新たな村を見つけたくらいだろう。
新たなモンスターといっても額に一本角の生えた犬なのか狼なのかよく分からない奴だったり、黒い後ろ足が発達したネズミのような奴で、面白くも大した脅威にもならない奴らばかり。
で、新たな村ってのがまた微妙に嫌な問題があって……その問題っていうのも正直もう諦めている感じ。
まぁその問題っていうのは……俺が見つけた村すべてが人間の村だったっていうこと。
俺が見つけたいのは人間以外の獣人やエルフとかの村なのに見つけた村すべてが人間の村ってどういう事だよ!?
結局、この5年くらいは移動しながら血液を飲んでは無くなってモンスターから補給して人間の村を見つけては無視、または血液がないとき人間を殺して血液を補給そして移動の繰り返し。
すこし、獣人やエルフが本当は居ないのでは? 存在なんてしてないのでは? と疑ったりもしたが、あの神様が獣人やエルフが居ると言ったのだから居るのだろう。
……では何故見つからないのか?
俺は理由を移動し続けながら考えた。 それはもう考えて考え抜いた。
……結果、俺は一つの考えに辿り着いた。 というかもうそれしか考えられない。
それはこの大陸には人間しか住んでいないのではないか?
獣人やエルフは別の大陸に住んでいるのではないか?
……という考えだ。
だって俺は多分5年以上ひたすら移動し続けて……それでも見つからないのだ……しかも俺が今いる場所がその考えを助長する。
今、俺の目前には大海原が広がっている。 ……そう、とうとう俺は海岸に出てきてしまったのだ。
これはもうこの大海原を越え、新たな大陸に渡れ……という天からのメッセージではないか? と半分くらい考えていた。
という訳で俺は本気でこの大海原を越えて新大陸を目指すことに……。
それでこの大海原を越える方法だけど……船を作る訳にはいかないし、というか作れないからやっぱり自分の翼で飛んでいくしかない。
そこで俺は早く新大陸に行きたいので全速力でぶっ飛んで行きたいんだけどまた一つ問題がある。
全速力で俺が飛ぶと俺の横にふわふわ浮いている携帯血液がその速度に付いてこれない。
だからといって携帯している血液が付いてこれる速度で飛ぶと何時新しい大陸に着くか分からない。
今居る場所から俺が大海原をよく見渡しても大陸は影すら見えないのだ。
なので携帯している血液を持ってゆっくりと飛んで血液不足で悩まないように安全に時間をかけて行くのか?
それとも、一刻も早く新大陸に行きたいから血液をここで出来るだけ飲んでから全速力でぶっ飛んで行くのか?
……少し悩んだが俺は全速力で新大陸を目指すことに決めた。
正直、全速力で飛んで行くならどれだけ遠くてもすぐに辿り着けると思う。
前に全力に近い速さで空を飛んでみようと試したとき俺はすぐに音の壁を超えた音がしたのだ……その時はすぐに飛ぶのを止めてしまったが、やろうと思えば何時でもできると思う……つまり少なくとも俺は音速で飛べる。
それならばいつ着くか分からない速度で安全にゆっくり行くより俺は良いと思った。
そうと決まれば早速準備をしよう。
と言っても着の身着のままで行くので準備なんて、出来るだけ血液を飲んでいくだけだけど……あまり飲み過ぎて途中で吐くのも嫌だし腹八分目にしておこう。
では早速、携帯しているそれなりに大きい球体状の血液を飲み始める。
「うぐぅ……ぷぁっ……やっぱり質があまり良くないからなのか、そこまで美味しくはないな〜」
……よし、これで準備は良いな。
俺は残った携帯血液を海岸に落とす。
バシャッと音を出して地に落ちた血液を見て、なんかここで誰かが殺された跡みたいだなーと思った。
「よし、行くか……あ、そうだ。 飛ぶ前に久しぶりにステータスでも確認しておこう」
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名前:エルトニア・ティターン
種族:ドラゴンヴァンパイア
レベル:2885
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久しぶりに確認したけど、これはレベルが結構上がっている方なのかな?
それともあまり上がっていないのか?
……他の生物のレベルを確認した事がないから分からないな。
「まぁそんな事はどうでもいいや。 さて、今度こそ行くか……とうっ」
少し気の抜けた声とともに翼を羽ばたかせ海岸から飛び発った俺は大海原の上を全力で飛んでいく。
やがてバシューンという音とともに衝撃波が発生して俺は音速に到達する。
音速に到達しても俺はどんどん速度を上げて大海原の上を飛ぶ。
もの凄い衝撃が発生しているのだろう……下の海が抉り取られたかのように俺の飛んでいる道がへこんでいる。
俺はその様子が面白くてもっと速度を出して飛び続けた。
♢♢♢
およそ1時間くらい全力で飛び続けた俺は視界に海岸と陸地が入ったのを確認して自分の考えが正しかったことを実感した。
およそ1時間くらいといっても音速を超える速度で飛んでいたのだ。
血液を携帯してゆっくり飛んでいたら少なくとも辿り着くのに1年は掛かっただろう。
でもやった! 俺は成し遂げたのだ! 見つけたぞ新大陸!!
そのまま俺は海面から幾つかの大きな岩のつきでている海岸に向かって飛んでいき……手前で急停止した。
もの凄い衝撃が俺を襲うが何とか踏ん張って耐える。
すると俺から発せられた衝撃波が前に飛んでいき海面から突き出ていた大きな岩に衝突した。
衝撃波に衝突された大きな岩は轟音を鳴らしながら粉砕されて海にバシャーンっと音を立てて沈んでいく。
「……衝撃波だけでこれかよ……攻撃に使えないかなこれ? ……っとそんな事より今は新大陸、新大陸!」
目前で起きた破壊行為よりも今、俺が楽しみにしているのはこの新大陸だ。
俺はゆっくりと片足から陸地に降り立つ。
「うおおおお到達したぞ新大陸! おそらく海越えして新しい大陸に足を踏み入れるなんてこの世界初じゃないか!?」
ここは古代ファンタジー世界だと神様が言っていたし間違いないだろう。
……世界初だとか海越えとか新大陸とかなんか無性にテンションが上がるな!
俺はしばらく新しく踏みしめた大地の感触を足で味わいながらはしゃいでいた。
「あ〜はしゃいだ、はしゃいだ。 もう充分だ」
もう充分、俺ははしゃいで楽しんだ。
だから次はこの大陸に来た目的を探しに行こうか。
30分くらい遊んでいた俺はこの大陸に来た目的、獣人やエルフ探しをする為移動することにした。
俺の目前には森が広がっている……どうやら海岸の次は森らしい。
とりあえず、俺は歩いて進むことに決めて森の中へ足を踏み入れていく。
♢♢♢
どれくらい歩いただろう。 俺は木々の枝やら葉、大地から伸びている草を掻き分けながら進み続けている。
今のところ特にこの森に変わった所はない。 人の手が入っていないごく平凡な森だ。
草や木々が伸び放題だし流石に人は居ないんじゃないかな〜。
そんな事を考えながら進み続けるとついに森の中で開けた場所に出る。
「うわっマジか。 ……これも村だよな?」
その森の開けた場所には、初めて人間の村を見つけた時の様に簡素な住居だと思われる建造物がならんで建っていた。
「まさかいきなり新大陸に来て村に辿り着くとはな。 しかもこんな森の中にひっそりとあるなんて」
とりあえず、俺はいつも通りなめられないように魔圧を2割ほどで放出しながら村に近付いていく。
村の近付いていく途中ですぐに俺はおかしな事に気が付いた。
――村が静か過ぎるのだ。
村の中を歩いている村人は1人も居ないし、かといって住居の中に居るようでもない……何故ならば生活音もなんの音もしない。
俺は思い切って村の中に入ってみる事にした。 一応突然の襲撃に警戒しながら村に入ってそのまま村の中央までやってきたが、村には何の反応もない。
「……どういう事だ? 一体何が?」
これでは何も分からない。 俺は困惑する一方だ。
「こんにちは〜。 ……誰か居ませんか?」
とりあえず、村の中心で声を上げて何処かで反応がないか試してみるが、村の何処からも反応はない。
……このままでは何も分からないままなので俺は更に思い切ってこの村の簡素な住居にお邪魔する事にした。
村の中央に近い所にある村の中の住居の中では比較的大きい住居に近付いて入り口だと思われる所から中を覗いてみる。
住居の中には何かの毛皮が敷かれていて石でできた小道具が幾つか転がっている。
俺はそれをもっと近くで見ようと住居の中に入ろうとする……が俺の翼が入り口でつっかえて中に入れない。
……というか俺の翼が入り口につっかえた瞬間、ミシミシッという嫌な音が聞こえた気がする。
「……嘘だろ?」
とりあえず俺は慎重に後退して身体が住居の中に半分入っている状況から抜け出そうとした。
「もうちょっと……もうちょっと……ホッ。 危ない危ない」
……なんとか身体を住居から出して一息ついたところでバリバリバリッという何かがへし折れるような音と共にその住居が砂埃をまきあげて潰れた。
「……あーこれは……俺知らない」
俺は不幸にも勝手に潰れてしまった村の住居のことは忘れる事にする。
気を取り直して俺は村の中の住居を探索することにした。
といっても住居の中に身体が入らない俺は住居の入り口から中を観察するくらい。
結局、住居を入り口から覗き見たくらいじゃ何もわからない。
わかった事といえば、どの住居の中も同じように毛皮と石でできた小道具があるという事。
これだけではこの村に何故村人がいないのか? この村で一体何が起きたのか? まったくわからない。
「気になるなぁ。 どうして誰も居ないんだろ?」
そのまま俺は村の中をグルグルと回っていると村の奥の地面が少し鈍く反射したのを目撃する。
「なんだ?」
近付いて見てみるとそれはポツポツと赤い斑点が落ちている光景だった。
「これは……まさか血痕か!」
よく見るとそれは俺がよく見慣れたもの、血液が落ちた跡、血痕だった。
「……まさか絵の具だったりしないよな? いや、俺の嗅覚がこれは血だといっている」
ドラゴンヴァンパイアに転生して鋭くなった己の五感はこれが血液だと証明している。
……まぁヴァンパイアになった恩恵かもしれないが。
地面にポツポツと落ちている血痕は村の奥から森の中へと続いて落ちている。
「これは……事件ですね!」
なんだかサスペンスドラマの主人公の探偵になった気分で俺は少しノった。
そのまま俺はこの事件を解決しようと血痕の後を追い森へと入っていく。
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