第16話『初仕事です!-前編-』
校門の近くに到着すると、私と沙耶先輩、千晴先輩とひより先輩の2組に分かれる。既に生徒が登校し始めているので、私達の仕事は始まる。
風紀委員の私達が姿を現したからか、スカートの丈や髪の毛を気にしている生徒もちらほらと見受けられる。普段からしっかりとしていれば気にする必要はないと思うけど、私達がいることで、自分の身なりを気にするだけいいのかな。
「あっ、あの子……スカート丈が短そうだから、こっちに連れてくるね」
沙耶先輩が指さした先にいる生徒さんのスカート丈は確かに短く見える。他の生徒さんよりも脚の露出度が高いというか。
「そう言って、あの生徒さんのパンツを見ようとしていませんよね」
「そんなわけないよ。じゃあ、連れてくるから」
沙耶先輩はスカート丈の短めな生徒さんのところに行って、その生徒さんと一緒に私のところやってくる。沙耶先輩に連れて来られた生徒さん、心なしか嬉しそうに見えるんだけれど。スカート丈を短くしたの、わざとじゃないよね?
「琴実ちゃん、メジャーでこの子のスカート丈を測って」
「はい。では、失礼しますね」
メジャーを使って生徒さんのスカート丈を計ると、
「膝上15cmですね」
校則ギリギリか。これ以上短いと校則違反になる。
「ありがとう、琴実ちゃん。君、今回はギリギリ大丈夫だったけど、もうちょっとスカートの丈を伸ばした方がいいね。そうしないと、うっかりと君の穿いているパンツを誰かに見られちゃうかもしれないから」
「分かりました! でも、朝倉先輩にならパンツを見られても良かったんですけどね。もう少し短ければ、校則を違反した罰としてパンツを見せることになっていたのかなぁ」
うっとりとした表情をして、連れて来られた生徒さんは朝倉先輩にそう言う。そんなことを言ったら、沙耶先輩にここでパンツを見られてしまうんじゃ……。
「私は女の子の穿くパンツが大好きだけど、校則を違反した罰としてパンツは見ないよ。それじゃ、パンツを見ることが悪いみたいじゃないか!」
沙耶先輩は真剣な表情をして力説するけど、無理矢理にでも私のパンツを見ようとしたことがあるので、私にとってはパンツを見ることは悪いイメージがある。あと、千晴先輩なら絶対にパンツを見るのは悪いと言いそうだ。
「……ごめんなさい、私が間違っていました」
「分かってくれればいいんだよ」
あれ、今、謝ったってことは……この生徒さん、沙耶先輩にパンツを見てほしくて、わざとスカート丈を短くしたってことなんだ。人気のありすぎる生徒が変態なのは罪なのかもしれない。
「でも、いつか……朝倉先輩にパンツを見せに行ってもいいですか?」
「それは歓迎するよ。でも、スカート丈が短かったら見ないからね」
「分かりました。気をつけます。では、失礼します。2人とも、風紀委員のお仕事を頑張ってくださいね!」
生徒さんは私達の元から立ち去っていった。
「……まったく、私にパンツを見られたいからってスカート丈を短くするなんて。私は無理矢理に理由付けしてまでパンツは見ないけどね」
「そ、そうですかぁ?」
初めて私のパンツを見ようとしたときには、色々と屁理屈を言って、パンツを見せるところまでこぎ着けた気がするけど。今の言葉はあまり信用できないな。
「でも、パンツを見てほしいことを利用して、校則を守らせようとするなんて……さすがは先輩ですね」
「さっきも言った通り、パンツを見ることは悪いことじゃないからね。だから、私は校則を守っているからこそパンツを見たいと思っているんだ」
「……私にはその理屈がよく分かりませんが、あの生徒さんが校則を守るんだったらいいんじゃないかと思います」
パンツに関して何が正しくて、何が間違っているのか分からなくなってきた。それでも、校則を守るように促せるんだったらいいんじゃないかなと思う。
「じゃあ、次の生徒に行こうか」
「はい」
さっきの生徒さんのように、沙耶先輩にパンツを見られたい生徒さんが他にもいるかもしれないな。
「琴実ちゃん、次はあの生徒かな」
沙耶先輩が指さす先にいる生徒さんは、パッと見た感じでは大丈夫なように見えるけど。
「えっ? スカート丈も膝くらいまでありますし、髪も大丈夫そうですけど」
「顔だよ。活動室で、藤堂さんも化粧をしているかどうかは重点的にチェックするって言っていたじゃない」
「そうですけど、ぱっと見た感じ特に化粧をしているようには……」
「確かに一目見ただけだと分かりづらいかもね。じゃあ、連れてくるから」
そう言うと、沙耶先輩は化粧をしているという生徒さんのところまで行って、私のいるところに連れてくる。
「君、アイラインを引いているね。あと、よく見るとそのまつげ……つけまつげかな」
「はい。そうですが……」
言われてみればそんな感じもするけど、沙耶先輩がここに連れてくるまではどこに化粧しているのかさっぱりと分からなかった。
「うちの学校では化粧はだめなんだ。君、新入生かな?」
「はい、そうです」
新入生だったら、やっちゃったのも仕方ないのかな。
「じゃあ、この機会に化粧が駄目なことを覚えておこうね。化粧を楽しみたいなら、休日にするようにしよう」
「……はい」
沙耶先輩と顔が近い状態で注意されたからか、連れて来られた1年生の生徒さんは顔を真っ赤にしてうっとりとした表情を浮かべている。
「ここで化粧を落としちゃうね」
そう言うと、沙耶先輩はポケットから化粧落としのオイルとシートを取り出して、生徒さんの目元の化粧を落としていく。
「はい、これでOK。化粧しなくても君は凄く可愛いと思うよ。ね、琴実ちゃん」
「そうですね」
化粧を落とすと目元はちょっと変わるけど、十分に可愛らしいと思う。
「君はそのままでも十分に可愛いから、化粧をする必要はないよ」
「あ、ありがとうございますっ! 先輩のような方からそう言われるのはとても嬉しいです!」
「私は可愛い女の子が好きだからね。化粧をしているときよりも、今の君の方が好きだな。その顔に自信を持っていいんだよ」
「……分かりました」
化粧をしないように促しているのは分かっているけれど、口説いているように見えてしまって何だか嫉妬しちゃう。1年生の生徒さんも相変わらず、沙耶先輩のことを見つめながらうっとりしているし。
「じゃあ、今日も授業頑張ってね。教室に着いたら、友達に化粧はダメだって言ってくれると嬉しいな」
「分かりました! 友達に言っておきますね。では、失礼します」
そう言うと、1年生の生徒さんは私達に頭を下げて、校舎の方に向かっていった。
「ちょくちょく違反する生徒や、曖昧な生徒もいるけれど、みんな素直に注意を聞いてくれるよ」
「沙耶先輩の注意の仕方が上手だからじゃないですか?」
その仕方は特殊だと思うけれど。
千晴先輩とひより先輩の方を見てみると、千晴先輩が結構な頻度で生徒を呼び止めているな。たまにひより先輩が違反者名簿を書いているし。向こうはかなり厳しそうだ。
「沙耶先輩って優しいんですね」
「なるべく優しく接したいからね。それに、生徒の顔はよく覚えているし。パンツを見せてくれた生徒ならパンツとセットで。だから、何度も違反している生徒のことは分かっているよ。今日の2人は初めて呼び止めたから、まずは注意したんだ」
「そうなんですか」
何だか、校門に着いてからの沙耶先輩は真面目でしっかりとした風紀委員に見える。所々でパンツが絡むけど。
その後、一番多く生徒が登校する時間帯となり、何度か沙耶先輩が生徒さんを呼び止めるけど、呼び止められた全員が先輩の注意をしっかりと聞いてくれるので、私が違反者名簿に名前を書くことはない。
校門が閉まる10分前となり、登校する生徒がだいぶ少なくなってきたところで、
「ことみん!」
私の親友、唐沢理沙ちゃんが登校してくるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます