第31話「誰も悪くない」
芝公園に着くと、そこには僕が知ってる電波塔、東京タワーがあった。
1958年に竣工され、観光名所としても知られる電波塔。
現在は東京スカイツリーに次ぐ日本で二番目に高い建造物である。
しかしここって中学の時に修学旅行で来て以来だな、異世界だけど。
そしてタワーの下まで来て
「では早速……はっ!」
サオリさんが気合を入れるとそこに沢山の気の塊が集まってきた。
「チャスタくん、これでいい?」
「うん。後はえっと……あ、これいいな」
チャスタは持っていた魔法の袋を探ってビー玉を七つ取り出した。
「これを芯にしてエネルギーを集めたら光の玉ができるはずだよな」
そう言ってビー玉を地面に置き、目を瞑って手を組み呪文を唱え始めた。
そして……
「ええいっ!」
掛け声と共に手をかざすと、宙に浮いていた気の塊が勢い良くビー玉に吸い込まれていき、やがてそれは光り輝く玉、昨日見た光の玉と同じものになった。
「できた……やったあ!」
チャスタは飛び跳ねて喜んでいた。
「やったわね、チャスタ!」
ミカはチャスタを抱きしめた。あ、ほっぺにちゅーしてら。
「ではこれを使って、あ」
「ん? どったの姉ちゃん?」
「隆生、これを使うのは誰でもいいわけではないんだろ?」
「そうだよ、心が通じ合う七人が集まればいいんだよ。たとえその時が初対面でも、いずれどこかで繋がるはずの、または知らないところで繋がっている七人がね」
「あ、なるほど。ではここにはもう七人以上いるな」
「うん。さて、どうしよ?」
「私は遠慮しておくよ。新たな道を作るのは若者のすることだろうしな」
じいちゃんがそう言ってきた。
「じいちゃん、僕はともかく姉ちゃんは若くな……グエエ!?」
姉ちゃんが無言で僕にスリーパーホールドをかけてきた。
「皆さん、光の玉でできた道なら大丈夫のはずですが、途中で万が一何かあってもいけませんので使うのは九州に、近くに行ってからにしません?」
サオリさんがそんな事を言ってきた。
「そうですよ。それにそれだと先行したアンドロイドさん達に悪いしまたブルートレインに乗りたいですし」
「わたし電車はどうでもよかったけど、窓から見える星空は綺麗だった。また見たいです」
「僕はそれでいいよ。皆はどう?」
他の皆も異議なしだった。
「では夕方に東京駅に来てくださいね。私は先に駅に行ってますので」
サオリさんは近くに置いてあった車に乗り、猛スピードで去っていった。
あれに乗ったら乗り物酔いするな。
「さてどうする? 一旦ホテルに戻る?」
「いや、せっかく来たんだから東京タワーに登っていかないか?」
「姉ちゃん、ここのエレベーターが動くかわかんないし、歩いてだとしんどいでしょ」
「ああ、それなら俺がエレベーターを動かしますよ」
ホクトさんがそう言ってくれた。
そして僕達は特別展望台まで登りそこから見える景色を眺めた。
「うわあ~! たか~い!」
ミルちゃん楽しそうだな。物凄くはしゃいでいるよ。
「ミルちゃん、あっちに富士山が見えるわ」
「あ、ほんとだ~!」
今はユカが付いていてくれてる……うん、昨夜も思ったけど大丈夫そうだな。
「ミルには隆生の記憶にある限りの事は全て話したが『誰も悪くない』と言ってたぞ」
じいちゃんがそんな事を言ってきた。
「え、そうなの?」
「ああ。両親を追い詰めた者達でさえ悪くない、と」
「……凄いね、もし僕だったらそうは思わないだろうな」
しばらくして
「ねえ、お姉ちゃんにもこの本見せてあげるよ~」
ミルちゃんはユカに何か薄い本を見せていた。あれなんの本だ?
「あ、その本?」
「どうしたの?」
「それ、わたしも持ってる。ほらね」
ユカは魔法の袋からやはり薄い本を取り出した。
「あれ~、おんなじだ~? なんで?」
ミルちゃんはそれを見て首を傾げていた。
「この本は昔ミルちゃんのお母様が書いた本なの。それを私が貰ったんだけど、もう一冊あったのね」
「え、ママが書いたの、これ?」
「そうよ。どう、わかる?」
「……よくわかんなかったけど、お姉ちゃんと会ってから何か分かる気がしてきた……はあはあ」
「そう……さあミルちゃん、コッチへ……はあはあ」
ゴン!
「なんなのかわかったわ! 幼い子供を腐の道へ引きずり込もうとするな! てかBL同人誌も書いてたんか、メルさんは!?」
「痛い……メルはBL作家でもあったお母様の弟子だったし」
ユカは頭を抱えながら言った。
ユカの母親、カレン王妃はそうだったんかい?
「あ、そういえばそっちの母様は、王妃様であると同時に作家だったわね」
ミカが話に入ってきた。
ちなみにミカ側のカレンさんはあっちの世界では伝説のBL作家である。
「うん。こっちのお母様のペンネームは『J・ハープ』だったの。時空を超えた伝説の大貴腐人様で、BL作家でもあった方の名前なんだって」
うーん、そんなもの凄い作家がいるのか。
「父さん、あんなのよくミルちゃんに持たせてるな」
「いや、教育によろしくないと思って隠してあったが、いつの間にか見つけれられてその後離そうとしないのでな。おそらく実の親がゆりかごに入れたものだろうと思って処分しなかったのが仇となったか」
「なあ、シューヤ」
「なんだよ、チャスタ?」
「お互い頑張ろうな」
「ああ、そうだな……」
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