第30話「皆それぞれ何かある」

「もしかして東京タワーがある場所?」

「そうですよ、ああいう電波塔が建ってる場所はエネルギーが集まりやすいんです。そっちの世界も同じだと思いますよ」

 僕が尋ねるとサオリさんはそんな事を言った。


「そうなんですか……あれ、じゃあここからだと押上にある日本一高いタワーの方が若干近いんじゃ?」

「こっちの世界ではまだその電波塔は完成してませんよ」

「あ、そうだった。上野辺りなら見えるはずだわ」

「そうですよ。それといずれ建った時には、そっちにエネルギーが集まりやすくなると思いますよ」

「そんなものなんですか?」

「ええ。さて、今日はもう遅いので明日にしましょう。皆さんもいいですか?」

 サオリさんが尋ねると全員了承し、またホテルに戻る事にした。


 アンドロイドの皆さんはそのままドームで休み、朝になったら各地に散っていろいろな作業に入るんだって。

 そして何人かは今から先行して九州に行き、拠点を整えて僕達を待っててくれるみたいだ。

 皆さんお手数ですがよろしくお願いします。




 ホテルの自室。

 そろそろ寝ようかと思った時、ドアをノックする音が聞こえた。

「はい、誰ですか?」

「あの、オイラだけど」

「あ、チャスタか。ちょっと待って」

 ドアを開けるとターバンを外したままのチャスタがいた。

「どうしたの?」

「ちょっと話したいんだけどいい?」

「うん、いいよ。どうぞ入って」

 

 部屋に入ってもらったが狭いのでベッドに座ってもらった。

「で、話って?」

「この角、皆は気味悪がってなかった。シューヤは少し驚いてたけどすぐ普段通りになったよ」

 チャスタは自分の頭を擦りながらそう言った。

「そりゃそうだよ。そのシューヤも言ってたけどチャスタはチャスタだよ」

「うん。ならもっと早く言えばよかったと思った。もし気味悪がられたらと思ったら……いや、それより隠し事してたのを怒られやしないかと思ったら」

 チャスタは涙目になっていた。

「誰だってそういうのはあるよ。たとえそれが仲間であっても言えないってのが、ね」

「そう? 隆生さんも何かあるの?」

「うん。あるよ……ってのが」

 僕は誰にも言ってないある事をチャスタに話した。

「へ? あ、あの、よくわからないけど、それオイラに言ってもいいの?」

「いいから言ったんだよ。でも皆には内緒だよ。いつか自分で言うから」

「うん、わかったよ……なんだ、皆それぞれなんかあるんだね」

「そうだよ。皆なんか持ってると思うよ」


 その後もいろいろと話し、そして。

「ありがと隆生さん。何かスッキリしたよ」

「よかった。まあ僕でよければ何でも話してよ」

「わかったよ、じゃあオイラそろそろ戻るよ」

「うん、じゃあおやすみ」

「おやすみなさい、隆生さん」

 チャスタがそう言って部屋から出ようとしたが、ドアの前で立ち止まった。

「ん、どうしたの?」

「シッ、静かに。ドアの外に誰かの気配がする」

 チャスタは僕の方を見て小声でそう言ってきた。

 そして彼はそうっとドアを引いた。すると

 

 ミカとユカ、そしてミルちゃんがバタバタと倒れてきた。


「……おい、何してた?」

 僕が女子三人に尋ねると

「いつ二人が(ズキューン!)するか待ってたの」

 ユカが鼻血出しながらそう言ってきた。

 って誰がそんな事するか!

「チャスタ、それわたしに言って欲しかったなあ……そっちも期待したけど」

 ミカ、拗ねるだけにしてくれない?

「あのね、何故かこういうのが気になるの。なんか天国のママが『お行きなさい』って言ってる気がするの」

 メルさん、娘のミルちゃんを腐の道へ進ませようとすんな。

 てかあんたも腐女子だったのか?

 

 ん、あれ、待てよ?

「ねえ皆、もしかして僕が言ったことも聞いてた?」

「「「……エ~ト、ナンノコトヤラ」」」

 三人共あさっての方向を見てしらばっくれていた。


「まだ言わないでね。もし言ったら」

 僕は低い声を出して睨みつけてやった。すると


「「「はい、言いません!」」」

 三人共震えながら敬礼した。うん、息ぴったりな姉妹とその従妹だわ。


 その後全員自分の部屋へ戻っていった。


「……まあ言わないだろね、てか意味がわかんないだろうしね、たぶん」




 そして翌朝。

 僕達はホクトさんが運転するマイクロバスで芝公園へと向かった。

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