第25話「これなら……」

 そして中に入ると、うお!

 魔族、狼や虎、馬、牛の獣人族、竜みたいな人もいる。

 よく見たら何人か子供もいるよ。

「ミルちゃーん!」

「あ、皆~!」

 その子供達がミルちゃんに駆け寄って来て、ワイワイ話し始めた。

「すみません、女房や子供は置いていけばよかったかもしれませんが全員で、との事でしたので」

 ホクトさんがじいちゃんにそう話していた。

「あの時はもう……ミルちゃんに寂しい思いさせてしまってごめんなさい」

 サオリさんが言い難くそうに謝った。

「いえ、守護神様に取り憑くようなもんが相手じゃ、もし俺達が知っててもどうする事も出来ませんでしたよ。さ、もうお気になさらずに」

 ホクトさんはそうサオリさんを慰めた。

「ありがとう。私、改めてこの世界の守護神になれてよかった、あなた達がいてくれてよかったと思ったわ」


「さ、それはもういいとして、皆との再会を祝して飲みましょうか」


「じいちゃん、ただ飲みたいだけじゃ?」

「何だと? それ」

 じいちゃんがいきなり僕の額に手をかざしてきた。

 あ、あれ?




「ねえおじいちゃん、僕肉まん食べたいよ」

 隆生はうつろな目をしていた。

「そうかそうか、じゃあ後でな。ふう、この時は可愛らしかったのになあ」

「父さん! 隆生を元に戻せ!」

「何だ優美子、お前も子供に戻るか?」

「邪魔しないから元に戻してー!」


「ねえユカ、勝隆さんって下手したらタケルやヒトシさんよりも強いんじゃ?」

「うんお姉様、優美子さんが泣き叫んでるくらいだもん。怖い」

「おれ、うちのじい様が神力あまり使えなくてよかったと思った」

「あのじいちゃん最初は優しい感じだったのに。オイラも怖いよ」

 少年少女達はそれを見て震えていた。




 そして

「あ、あれ? 僕はいったい何を?」

「隆生、今後酒の場で父さんの邪魔はするな。何されるかわからんぞ」

 姉ちゃんは泣き顔になっていた。

 うん、聞かなくても何があったかわかった。 もうしません。


「では乾杯!」

 そして歓迎会が始まった。

 ミカとユカ、シューヤ、チャスタはミルちゃんや子供達と同じテーブルで楽しそうにしていた。

 でもミカは十五歳、向こうの世界じゃ成人だしそもそもここは異世界だからお酒飲んでも不都合ないけど、と言ったら子供達と話したいから遠慮するって。

 そしてよく子供達の面倒見てくれてる。

 ああ、僕も昔「美華おねえちゃん」に面倒見てもらったな。

 

「あ、そういやギンガさんはずっとあそこで留守番?」

 僕がそう呟くと

「今は留守番てか休眠状態になってますよ。整備できる人間がいないので動きまわって何かあったらいけませんし」

 隣にいたホクトさんが答えてくれた。

「そうですか。こっちって建物は古い気がするけど、科学力はうちと桁違いだ。あ、そうだ。他のアンドロイド達はどこに?」

「全員文京区にあるドームに寝かせてますよ。彼らが動けたら捜索とか復興作業とかでかなり助かるんですが」

「うーん、ん? あ、そうだ。これならギンガさん達を」

「え、何かいい方法が?」

「ええ、でもこれサオリさんに聞かないと出来るかわかんないし」

「あたしがどうかした~?」


 ……そこには既に出来上がってるサオリさんがいた。

「酔いが覚めた時に聞きます」

「だ~いじょうぶよ~、で、なに聞きたいの~?」

 サオリさんがヘナヘナしながら近寄ってきた。

「あの、サオリさんは別の世界から人を呼べますか?」

「え~? あの世にいる人なら」

「いやあの、生きてる人を」

「あ~、それも普段ならできるけどね~、今は本の影響なのかうまくできないのよ~。余所から何か送ってくるのを受け取るのはできるけどね~」

「そうですか、なら……ねえ、何も言ってこないけど見てるんでしょ? セイショウさん」




 時空の狭間。

「気づいてましたか、さすがですね」

 セイショウは苦笑いで隆生達が映ってる映像を見ていた。

「キャハハ。さ、セイショウ、隆生にテレパシーしてあげてよ」

「はいはいわかりましたよ、父上様」

 

ー えーと、聞こえますか~ ー


「聞こえますよ~、てか見てたんなら何か言えや」


- すみませんね、余程の事が無い限りは手出ししないつもりだったもんで -


「これ、余程の事でしょ。ところで」


- 言わなくても既に隆生さんの考えはわかってますよ。それでさっき連絡取りましたが、今は元将軍が手が空いてるそうなので、明日にでも寄越しますね -


「わかりました、じゃあその元将軍、魔王軍のおひょいさんと呼ばれた方によろしく伝えて下さい」


- はい。では隆生さん、ゆっくり宴会楽しんでください -



「……隆生さん、今誰と喋ってたんですか?」

 ホクトさんがおずおずと尋ねてきた。

「あ、すみません。中心世界シュミセンの守護神様とですよ」

「え、あの変態と?」

 サオリさんは驚いていた。

「兄妹揃って同じ事言うんですね」

「だってあの変態は兄ちゃんとあたしを同時に食べようとしてたのよ~」

「……なんちゅう事を」

「てかさ~、あたし達って人間の感覚で言うならあいつの叔父と叔母よ~、どう思う~?」

「……呆れて物も言えん」




 再び時空の狭間

「あ、そうでした。お二人は叔父上と叔母上でした」

 セイショウは冷や汗をかいていた。

「そうよ、二人はあたしの弟と妹よ」

「え、あいつってランの弟だったの? なら姉弟どんぶ」

 グサグサグサアッ!

 ヒトシはまたランにハリネズミにされた。

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