第3話
それでは本日の戦略を組み立てていこう。
まずコンソメスープは絶対無理だ。
野菜多すぎんだろ。というか野菜しかない。特に玉ねぎ。とりあえず玉ねぎに持ち場を占拠されてぷかぷか浮いてるベーコンだけ救出しておくか。
そもそも俺はこんなものを食わなくてもポテトチップスのコンソメパンチ味いつも食ってるからいいんだよ!
違うか、違うな。
次にほうれん草のソテー。
香ばしい匂いが漂っているが騙されてはいけない。なぜこんなものをバターや白ワインで味付けしたんだ?
ミスマッチすぎる。
日本人はクレイジーだぜ HAHAHA!
こちらもハムだけ救出しておく。
マグロとレバーのケチャップ絡めはまあ大丈夫。マグロの方は普通に食べられるしレバーはなんか色合いが悪くて苦手な奴多いけど野菜を食べることを思ったらこっちの方がよっぽどマシだ。
以上のことから、今日俺が使うスキルは2つだ。
まず1つ目は隕石落下だ。
ちなみに隕石落下と書いてルビはメテオスパイクと読む。
もちろん落下をスパイクと読むことはできない。
このスキルにはとあるものを使う。
それは牛乳瓶のフタについている包装だ。
この包装の素材はビニールであるため濡れても破れることはないので非常に便利。
これに野菜を優しく包み込んでゴミ箱にぶち込むというシンプルな技だ。
なぜぶち込むのかというと普通に捨てるだけではゴミ箱の上層に残ってしまい、掃除の時間にゴミを捨てに行く生徒に見つかり先生に知れ渡る可能性があるからである。 何より絵面が汚い。
そしてこの包装がプラスチックゴミであるということも好都合だ。
ゴミ箱に手を突っ込んでも汚れないからな。
この#隕石落下__メテオスパイク__#はもう少し後で使う。 人が減ってからの方が実行に移しやすいからである。
そしてもう一つの使うスキルは悪魔の囁きだ。 ちなみに悪魔の囁きと書いてルビはスピーク・オブ・ザ・デビルと読む。
あれ、これじゃただの英訳じゃん。
これは簡単に言えば近くのやつに食べてもらうためにおれの巧みなトーク力で言いくるめるというものだ。
ただ、このスキルは常に発動可能なわけじゃない。 近くになんでも食べれるオールラウンダーや、大食いのパワータイプみたいな奴がいないといけない。
だが幸い、今の席なら惜しみなく発動させられる。なぜなら…
俺は後ろを振り返る。
「お~?なんだ新井~? また給食くれるのか~?」
後ろの席の松山だ。
ちょうど左手にパンを持ちながらスープを啜ってた。
がっつきすぎだろ。もうグラトニーにしか見えねぇぞ。
こいつは見た目通りの大食らいで基本的にはなんでも食べるし常に腹を空かせいてる漫画キャラのような奴だ。
「話が早くて助かるぜ、今日はこのコンソメスープを頼む。」
だからなんでも食べてくれて超便利…
「待て、お前それ口つけたんじゃないだろうな?」
いつもの野太くゆったりとしたトーンが急に鋭くなる。
超便利とはいかないんですよね、これ
こいつには致命的な欠陥がある。 こいつは極度の潔癖症なのだ。意地汚いのに。
ほんとなんでなんだよ、芸能人とかにもいるけど潔癖症のくせに部屋汚かったりするんだよな、どういうことだってばよ。
なので、少しでも口をつけた物は絶対に食べてくれない上に野菜はそんなに好きではないので今日のメニューでいうほうれん草のソテーのような野菜メインのものも基本的には食べてくれない。
先週 大苦戦を強いられた茹で野菜やたまごスープをこいつに頼めなかったのはそのためである。
なんという諸刃の剣。
「つけてねーよ、安心しろ お前に食ってもらうために触れてもいないからな」
少しでも気になる点があったら食べてくれないからな、最新の注意を払っておいたぜ。
「さすが新井だな~ じゃあ遠慮なくもらうぞ~」
「あ、おい」
松山は俺の持っていた新品のコンソメスープと奴のあっという間に空になった皿を交換する。
おいおい、もうちょいこっそりやれよ先生に見つかったらやばいだろうが。
ちなみにもし見つかった場合は喧嘩両成敗で2人とも居残り掃除をさせられることになる。 なによりみんなの前で怒られるとか恥ずかしいし目立ってしまう。
見つからなくてよかった…
「んほおおっっ!うめええええぇぇっ!!!!」
水を得た魚。いや魚じゃないな、良く言ってもガマガエルだ。
なんとおぞましく汚い絵面だろうか。
排水口の滑りのような不快さだ。
「そ、そか。よかったな…」
というか#悪魔の囁き__スピークオブザデビル__#とか言ってたけど全然囁いてないな…本人めちゃ喜んで食べてるし。 てかもう食い終わっとる。そのうちワドルドゥ吸い込んでビームとか出してそう。
ちなみにぼくが1番好きなコピー能力はトルネードです!
俺の分も含めて完食した松山は満足そうだ。
でも汚いから食べてる姿はもう2度と見たくない。
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