戦争が始まる。

戦争が始まる。


この地域一帯は避難区域に指定された。

僕はレミングのような行列から逃れて立ち止まってみる。他に誰も列から離れる人はいない。そして僕を引き留める人は誰もいなかった。


閑散としただだっ広い空間にただ1人で立つ。


孤独には憧れていた。

いつも誰かの場所に間借りしているような窮屈なかりそめの空間に縛られたアンバランスな、力づくで引きちぎられるような嫌な気分からようやく解放された。


戦争が始まる前、僕は遠くまで風が吹き抜けるような広くて何もないこの場所を眺めていた。

そして何かがいつかこの場所を占領してしまうのではないかということをはかなんでいた。

しかしその心配はもうない。

文明が遠ざかったこの地に、開発の危機は二度とあり得ない。


僕は列に戻ることをやめ、孤独を感じる事の出来るこの場所に家を建てることにした。


爆撃によって破壊された塀の廃ブロックを集めてきた。

爆撃はもう起こらない。あらかたの建物が消えうせてしまった。

考えようによってはここは最も安全な場所ともいえるのだ。

食料は近くの総合ショッピングセンターに取りに行く。


でもそこはやや危険だ。何故ならば、物資を調達する場合は敵はここを拠点にする可能性がある。

人間にとって一番必要なのは食料、そして眠ること。

身づくろいやプライドはその次だ。

そして成功もその言葉と同じ響きの何かもその次だ。


ブロックの積み重ね作業は僕にとってお手の物だった。

灰色ブロックに記憶の中で色を付け、配置していく。

ブロックは下から上に積み重なっていくけれど、設計図の中では常に中空に固定されている。



閑散とした空間を表すもの

爆撃により破壊した最もダメージの大きい状態を示すもの

集合においての孤独を表すもの

集団心理の中において出現する個の持ちうる劣等意識を数値化


損壊を受けたブロック同士の積み重ねを表すもの


ショッピングセンターが敵にとってどのように有利かを示す指標 拠点にする確率 商材の利用価値種類

人の生活行動の優先順位

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