俺の夏休み

beginning


夏休み。その言葉からみんなは何を連想するだろうか? 仲間たちと過ごす青春? 遊びまくりの毎日? ……確かにそれは間違いではないと思う。実際、俺だって仲間たちと遊ぶ。が。

 その仲間だ。みんなが思いつくものといったら例えば、熱い心を持った熱血系だったり、クールな冷静キャラだったりするのだろう。しかし、悲しいことかな、俺は人見知りである。その為、そんなスクールカーストの頂点、学級の中心の人々と関わることなんてできるわけがない。ダッサい瓶底眼鏡をかけた男子。見るからにガリ勉だとわかるひょろひょろとした男子。この中では唯一の女性、しかし地味。漫画で言えばモブキャラレベルに影が薄く、みんなから忘れられてしまう存在。いや、モブキャラなのはこの地味子ちゃんだけではない。みんなだ。ここにいるみんながモブキャラなのだ。



遊ぶにしても、ゲームだとか、外で遊ぶだとかは一切しない。家の中で本を読むだけ。さすが勉学に励む人々である。

 ……と、ここまでこいつらの悪いところばかり言っていたが、良いところだってもちろんある。というより、良いところの方が多い……。

 まず、こいつらは人見知りだった俺を受け入れてくれた。

 必要なときばかり仲良くして、困ったときになったら切り捨ててしまう、カギ括弧付きの『友達』とは違うのだ。困ったことがあっても見捨てず、救いの手を差し伸べてくれた。きちんと、俺を友達として認めてくれた。



 ……そしてこれから、夏休み――。漫画風に言ってみれば、『高校生活二年目の夏休み』が始まる。

 この仲間たちと家の中で本を読んだり、時には笑いあったり。来年は受験勉強で忙しくなるから、今のうちに遊んでおこう、と俺は思っているし、そうなるのだと勝手に思っていた。






 そのはずだったのに、こんなことになってしまうなんて……。

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