クロレキシブ
おにぎりお
第1話黒歴史部①
黒歴史。それは封印されし過去の記録。この言い方が既に中二臭いのだが、僕はもう中二病ではない。別段学年が上がったから、それに伴い中二病から中三病へと呼称が変わっただとか、そういう下らない事でもないよ。現状脱却した。自分の行いに恥じらいを感じるようになった。だから、これまでの自己尊大的な思い出に蓋をし、心内に黒歴史として厳重に保存するべく、ベタではあるが高校は中学校の頃の同級生が誰も通わないであろう隣町のマイナーな所を選んだんだ。
本日、この日は新たな僕の始まりを告げるめでたい日。高校生活は、さすがにTVドラマのような甘いイベントは訪れないだろうが、それなりに期待はしている。待ってろよ青春!なんて上機嫌で、周りに通報されないレベルのうきうきステップ(屋外バージョン)を踏みながら、僕は舗装された通学路を一人で歩く。
着いたぜ。私立三佐上高校(しりつみさかみこうこう)。ここが主に僕のこれからの青春学生生活を育む場所だ。偏差値は、たしか五十いくかいかないか程度。私立だし、滑り止めで受験して滑っちゃった人が殆どを占めてるもんだと勝手に予想している。僕もその中の一人だからね。て言っても第一志望は万年E判定だったんで、そこまでの悲壮感は抱いていない。この学校は、文武両道を掲げているが、学習環境も進学率もそこそこ。部活動においても良くて地区大会ベスト十六程度。平々凡々というか、それ以下。けどそれだから悪い訳でもないし、自分等の年に革新が起こる可能性だってある。生徒数も過不及ない。男女共学だし、高校デビューには持ってこいだろう。期待するなといわれても、やっぱりしてしまうぜ新生活。これから僕の甘くてしょっぱくて苦くて酸っぱくて旨い、振り替えればよくわかんないようなごちゃ混ぜ青春スクールライフが始まるのね。非常に楽しみだ。なんて意気込んだ僕は、物語の主人公っぽく期間限定で装飾された正門をくぐり抜け、あらかじめ自宅に届いていたクラス番号と出席番号の記されたプリントを頼りに、入場で使うのだろうか、クラス番号がデカデカと載っている大きいプラカードを持っている先輩のとこへと向かった。
長いくせして内容ナッシング。マンネリも甚だしい入学式も、ようやく終わってくれた。新入生退場の号令の後、僕らは立ち上がり、プラカード先輩を先頭に、隊列を組んでついて行く。入学式は体育館で行われたわけだが、そこから校舎までは、渡り廊下を介して靴の履き替えをせずとも移動できる為、教室までの道程は割りとスムーズだった。『1年2組』そう記された室名札が入口扉の上らへん、見えやすい位置に設置されている。今日から僕は、ここで授業を受けたり、友達と談笑したり、セクシー眼鏡先生の特別授業を受けたりするのか。なにぶん中学時代の記憶は人為的に抜いてます故、新鮮味が有り余っております。なので期待が膨らみまくっているのであります。
プラカード先輩誘導の元、僕は教室に初めて入った。デジャヴ。中学校の教室と変わらず、一帯には整然と机と椅子が並んでて、各生徒専用の背面ロッカーと黒板は両極端にそれぞれ配置されている。いわゆる普通の教室だ。まあ、パンフレットを見たときから分かってはいたけどね。机の上には各々の個人情報が記された紙が貼られている。なんの説明もなかったが、大方自分の名前が載っている机に皆は座り始めるので、僕もそこへ座った。個人的には窓際、もしくは後ろから二番目の位置が理想ではあったんだけどな。自分の席は、ちょうど中間。ビンゴカードでいうところの『Free』の地点。授業を行う先生からすれば、最前列の生徒らより余程目につくので、生徒からすればジョーカー。まあ僕は授業中は真面目に受けられるだろうから心配ないとは思うが。
列の構成としては縦は同性のみ、横は、男、女、男、女、男。女子生徒にサンドイッチされていると考えれば、この席も強ち棄てたもんじゃないな。
どれ、
僕は、立体視出来ない限られた視界の中で、恒例行事である可愛い女の子探しをすべく、然り気無く辺りを見渡す。結構数いる。今年は豊作だろうな。特に僕の、黒板から見て右斜め一個後ろの席に座ってる、黒髪清楚で大人しめな子。タイプでは無いのだけれども、めちゃんこ可愛い。これで眼鏡でも掛けていれば席次トップランカーって感じがするなあ。フフフ、いつか話しかけてみようっと。そのために消ゴムを何個か用意しておかなくてはな。この前雑誌で『初対面の相手へ話しかけるにはキッカケが重用です』みたいなこと書いてあったからね。授業中とかに、わざと自然に落として、この子に拾わせ、それをキッカケに仲良くなってみよう。ノートとか貸してくれたりと、テスト前になれば大活躍してくれそうだしね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます