【Episode:17】 散りゆく者 -Sacrifice-

再戦

 蒼雪の犠牲があって、無事ヤム=ナハルからのエネルギー委譲を終えたエノシガイオスは、海中を潜行し、再び戦いの場へと赴いた。


 海上へと出てしばらく、遠くの空から、あの漆黒の無人戦闘機部隊ヴァルチャーズが寄り集まって来た。


 そして、再び、戦いの幕が開けた。


 前の戦いと同じように、ジョシュアとアルツ・ヴィマーナが敵陣を切り崩し、エノシガイオスがそれを援護する。


 こちらも補給を終え、エノシガイオスのエネルギーはほぼ百%の充填率となっているが、それは相手も同じ。


 戦いは、拮抗状態を保ちながら、明けることなく続けられた。


     *


 洋上での戦いは続き、黄昏がすぎ、夜が訪れた。


 現在ジョシュアとアルツ・ヴィマーナは、ともにエノシガイオスで補給を受けている。

 敵も陣形を整えるためにか、補給しているところを襲撃しようとはしないようだ。


 午後十時を回ってはいるものの、周囲は昼間のような明るさに照らされている。

 ノアが、ガイオスから疑似太陽A・S装置を打ち上げたためだ。黒く塗られた無人戦闘機部隊ヴァルチャーズをより視認しやすくするための措置。



「どうする、このままじゃ埒が開かないぜ?」

 焦れたようにハルキが言った。

「敵を殲滅させる前に、こっちの体力がもたなくなる」


 エノシガイオスで潜行中に十分な睡眠はとったものの、やはり前の戦いの疲労が完全にとれたわけでもない。


「これくらいでへばるなよ。なんのために俺がいつも訓練つけてやってたんだ」

 ジークが叱咤する。


「でも、例え不眠不休で頑張れたとしても、いずれまたガイオスのエネルギーも底を尽きるわ。そうなったら、今度はもう補給する手立ては残されていない」

 とノアが不安げに。


「どれくらいもちそうなんだ?」

 ジークが尋ねると、

「もって、明日の夜明けくらいまで」

「……そうか」

 ジークは思案げに視線を落とすと、

「分かった。俺に考えがある。インターバルが終わったら、試してみるよ」


「なにをするつもりなんだ?」

 ハルキが尋ねるも、

「おっと、敵さんが動き出したみたいだぜ。のんびりお茶してるわけにはいかないな。出るぞ」


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