【Episode:16】 暗殺者の気まぐれ ―Whim of an Assassin―

海底の沈没艦


「とりあえず、まいたみたいだな」

 とジークが額に落ちる汗を拭う。


「ああ、だいじょうぶそうだ」

 とハルキが安堵しつつ。


「ひとまず、休戦ね」

 とノアが、ブロンドの髪を結わえていたゴムをつけなおしながら。


 三人は今、エノシガイオスのコントロール・ルームにいる。


 エノシガイオスが、ジョシュアとアルツ・ヴィマーナを格納して急速潜行した後、上空を舞っていた無人戦闘機部隊ヴァルチャーズは、その海域から離れて行った。

 相手も、補給などのために一時撤退するつもりのようだった。


 なので、戦いから遠ざかった今、ハルキ達三人は、ゆっくりと休息をとることができていた。

 エノシガイオスの操縦は自動航行に任せて、食事を摂ったり、風呂に入ったり、睡眠をとったりした。


 だが、いつまでもそうしていられるわけではない。

 戦闘中程ではないが、潜行しているだけでもエノシガイオスのエネルギーは徐々に減っていくし、食料にも限りがある。

 その限られた中で、なにか打開策を見い出さなければならない。


 しかし、プラセンタが、『怒りの日ディエス・イレ』による爆撃で消失してしまった今、食料は自給すればなんとかなるかもしれないが、戦闘に必要なエネルギーを新たに補給することはできない。



「リンディ、どうすればいいんだろうね……」

 ノアが、不安げな面持ちで、コントロール・ルームでともにすごさせているロボット竜リンドブルムの首筋を撫でた。『リンディ』というのは、ノアがつけた彼の愛称だ。


「ギャァ……」

 リンドブルムは、項垂れながら、ただ小さく鳴くだけしかできない。



「おい、レーダーがなにか反応してるぞ?」

 コンソールの前にいたジークが、計器類を見ながら呼びかけた。


「なににだ?」

 とハルキがその傍に寄る。


「どうしたの?」

 とノアも続く。


「これは、まさか……」

 ジークは呟きながら、コンソールを操作して、矩形の三次元立体映像ホロ・プロジェクションモニターとして映像を結ばせた。


 そこには、深海の底に沈む、一隻の巨大な戦艦が映し出されていた。



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