終わりの神話
雨想 奏
【Episode:00】 世界を背負わされて ―Heavy responsibility―
チーム・トライデント
世界を救う、だって……?
この俺が……?
できっこない。
できやしない。
そんな大それたこと。
分不相応。
無理に決まってる。
無能。
卑屈。
意気地なし。
落ち零れ。
分かってる。
その器じゃないことくらい。
資格もなければ、才能もない。
未来なんて、どうだっていい。
誰かが悲しい想いをしたって、本当はかまわない。
どうせ、無理なんだ。
俺みたいなやつには。
このまま、闇の中に溶けて、ずっと眠れていたらいいのに――。
「ゲートに辿り着いたわよ」
ノアからの通信が入った。
まだ涙声ではあるものの、自分にしかできない役目を必死に務めようと、気丈さを見せている。
「このゲートを開いて海上に出たら、プロビデンス・アイの監視下に晒されることになる。すぐにここにいるってばれちゃうわ。そうなったら、もう後戻りはできないよ?」
「いつでもOKだ。愛しのヴィマーナちゃんは、すこぶるご機嫌みたいだぜ」
ジークが軽い調子で言う。
こんな状況下に不謹慎だと思えるかもしれないが、だからこそ、冗談めかして、ともすれば塞ぎこんでしまいそうになる気持ちを少しでもまぎらわせようと配慮してのことだろう。
「ガイオスもオールグリーン、いつでも行けるわ」
ノアは返すと、
「ハルキ、そっちは? 準備はいい?」
ノアから向けられた声に、ハルキは、閉じていた瞼をゆっくりと開いた。
――だけど、俺にしかできないんだ。
逃げることだってできる。
だけど、そうしてしまえば、これまでの自分を変える機会は、永遠に訪れない。
これまでに受けた傷--。
背負わされた悲しみ--。
すべての雪辱を晴らすための戦い。
そして、この世界を守るための戦い。
自分達だけにしかできない戦い。
勝って、未来をこの手に掴む。
「ああ。こっちもOKだ。いつでもかまわない」
決意をみなぎらせながら、答えた。
「それじゃあ、いくわよ」
ノアは促すと、
「せーの――」
「『チーム・トライデント』、出撃!」
三人は声を合わせて、声高に号令を叫んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます