妖怪館と秘密の友達

初心秋刀魚

第1章「新たな物語」

序章

 ―どうしてこうなった?

 誰が悪いとか、あいつがやったかなんて問題じゃない。

 分かっていたはずだこうなるって。

 悲鳴が飛び交う中に聞こえる耳を裂く怨嗟の声、楽しかった日々が鮮明に蘇る。所謂走馬灯というやつだろうか。家族や友達の笑い声が懐かしく思えた。

 いや、そう表すのは違うかもしれない。


「何年経っても変りませんわねぇぇえ! ええ、ええこれこそが完全たる新世界! が踏み入れなかった神域…、 感無量でぇすわぁぁぁあ!! 」


 ケタケタと狂気的に笑うソレは、正しく悪魔。

曇天の空に浮かぶ悪魔は、両手を天に掲げ高らかに笑う。

世界が終わると、唇を噛み締める。

何もできない無力な自分が恨めしくなった、大切な人を守れずにただ崩壊していく世界を見届ける。なんて見下げ果てたクズだろうか、反吐が出る。

 血が混じった土を小さな拳で握れるだけ握る。この血が誰のものかだなんて分かりもしないほどに、辺り一面が血で染められている。

 行き場の無い怒りと憎しみが頭の中を蹂躙し支配する。

嗚呼。これが夢ならどんなに幸せか、朝日と共にこの悪夢を覚まさせてくれ。


だが、その願いが届く事は…無かった。




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