童話症候群

雨音

長寿精神隔離病棟

神様って残酷ですよね。

死にたい人は、なかなかすぐに死ねない。

生きたい人は、すぐに死ぬ。

なぜでしょうか

不思議ですね。

なぜ望みの通りに死ぬことが許されないのでしょうか。

僕は、なにもできない、なんの価値もない、

それなのに死ぬことも許させない。

これ以上に不幸な事ってあるのでしょうか。

こんな冷たい病棟に閉じ込められなにもできない。

病棟にきてからできることはなんだってやったなのに最後には必ず助かってしまう。

こんなことが長く続き死について諦めがついていた。

生きていること事態が苦痛でしょうがないのに、死ねないことが幸福なのでしょうか死んで幸福だという理論は間違っているのですか。

無理矢理生きているのが幸福なら、皆さんの頭はどうかしている、いやそれとも自分も頭が可笑しいのでしょうか。

自ら望み死ねないという現実に諦めを感じため息をつく普通なら死にたくない、生きたいと願うはずた。

でも、生きる意味が無い。

僕は一体なんのためにこんな病棟に閉じ込められているのであろうか。

病棟に押し込められてから家族に一度も会ってはいない。いやきっと会いたくないのだろう。

僕の口や手は拘束され何もできないようになっている、拘束がなければ無意識のうちに手首を切ってしまうからだ、手首が切れないからといって舌を噛み切らないようにと後付けで無理矢理つけられ喋ることもできない。唯一自由なのは、足のみといっても僕の行動範囲は大体部屋や廊下のカメラで監視されているがため少しでも可笑しな行動に出れば看護師がすぐさま駆けつけてくるようになっていた。外に出るのも看護師たちの許可を得て監視のあるもとでの外出だ。

外出といっても病棟の庭のみだが。

ベットから出てぐしゃぐしゃになったベットのシーツが足に絡みつき適当に足を振り続け外し扉の鍵はなく横開き構造なので体を扉に押しあてずらし開け廊下に出る、廊下には看護師とそこらに倒れ込む僕以外の患者がちらほらといた。

一人の看護師に喋りかけられ僕は窓の方を見て、訴えかけた、よく会う人なのですぐに話は伝わったようだ。

でも、まだ僕は外に出ることを許させてはいなかった。

なぜなら、少し前に外に出たとき看護師たちの目を盗んで病棟の外に出ようとしたのが原因であった。

ちょっと見てみたかっただけだ。

それもダメか。

まぁ、仕方がない。

部屋に戻るように言われ渋々戻ろうとすると、廊下に倒れ混んでいた患者の一人が突然暴れだし、僕を見ていた看護師も慌ててそこへ向かっていった、僕は様子を伺いながら、すぐさま下への階段を降りて行った。

階段を降りた先に扉のない空間がある、そこがこの病棟の庭へ繋がる出入口だ、これより外に出るには向こうの赤い花で埋め尽くされた花壇の先にあるここよりもずっと先の出入口の門まで行かなくてはならない。

そこに行けるのは、ここから逃げ出すか完治し誰かが迎えに来るかのどちらかだ。

完治するかは人それぞれであり、まずもってあり得ない大体はこの隔離させた病棟の中で一生を終える。

僕は、ここで一生だろう。

脱獄するにもそこまでの気力などないし、そもそも最初の頃は、死にたいなど考えたことがなかった、家族に連れられこんな場所に閉じ込められ何年も迎えを待った

でも家族は誰も会いに来てくれなかった……帰っては来なかった。

どんなに帰りたくても、僕は病気だからと隔離されいつしか今この現状にまで落ちていた。

何年も同じ事を繰り返す日常が続きあの頃から気づくと背も髪もやたら伸びいていた、たまに看護師が切ってくれるのでそろそろ切ってくれるだろう。

庭には基本人はあまりおらず、今も少し辺りを見渡しているが誰もいなかった。

看護師に見つからないよう注意をしつつ散歩をしていた、することはない、誰かに会うということもない。

たまに散歩をしながら思う事がある普通ならこんな拘束をしている時点でもっと厳重に部屋に鍵をかけ隔離するはずだ、それなのに大袈裟に拘束をしているだけで部屋に鍵もなければ看護師がいれば外出も許させる、症状が軽いものがそうならまだ納得する、でも僕のような重症患者も同じ扱いだと一体何を考えているのだろうかと何年もそれについて考えてみた結論的に答えが出ることはない、思い付いたところで何がどうなるわけでもない、僕が死ねるわけでもないし誰か僕を殺してくれる人でも現れてくれればいいのに、そんなくだらない事を頭に思い浮かべながら庭にできた日陰へと移動し石でできた椅子に腰かけ庭の景色を眺めていた。

その時また一つ思い出したことがある。

そういえば、前に窓から見えたあの幼そうな少女二人組はあれから一体どうなったのだろうか、昔の僕のように泣いているのだろうか、それとも病気だと受け入れおとなしくしているのだろうか、そして今でも家族の迎えを待っているのだろうか。

僕の毎日はそんなどうでもいい事ばかり思い出しながら時間を潰す毎日だ。

少したったら、部屋に戻ろう。

もし今僕が部屋にいないと看護師たち気づかれ取り押さえられるなんてことになったらさらに面倒だからな、嗚呼、いっそのこと薬かなにかで安楽死などさせてはくれないだろうか。

冷たい石の上に寝そべり腕を動かしてみた拘束をさせているため勿論外れる事などできない。

どんなに死ぬことに諦めを持っていても病棟から出たいという気持ちに変わりはないのだから。

寝返りをうつように立ち上がろうとすると体重が下にいき地面に倒れ込む。

その時、何やら呼び声が聞こえた、自力で起き上がり声のする方角に目線を向けるとそこには季節にそぐわない赤いロングコートを身にまとった看護師らしくない奴に抱き抱えられ僕とは逆に足を拘束されていた。

優しそうな声に似合った色素のない髪色に夕焼け色の瞳がよく映える、いかにも病気がちと思わせるようなの外見をした少年だった。

少年たちは、僕の近くまでよりわざわざ立ち上がるのを手伝ってくれた、少年は僕の顔を見て喋れない事に気づき少し驚く仕草を見せてから、監視役の看護師などについて聞かれ、すべての質問に対し首を横に振り時々縦に振った。少し遅れてから少年は自分たちについて軽く自己紹介的な挨拶をし、ロングコートの男の話になると嬉しそうに自分の兄だと答えた、失礼ながら外見は全く似ておらず兄という男は少年に比べ口数が少なく黒髪である。一つ共通しているというと夕焼けよりも濃い瞳のみそして目の下には酷いクマができていた。

お世辞にも似ている節などなく、こんな成りをしているが一応ここの看護師らしい。

僕の様子から、看護師が不在つまり一人であることから、少年を抱き抱えていた看護師である男がようやく口を開き部屋まで送ると言われ、素直にその言葉に従い先頭を行き部屋にちゃんと入る所まで見送られた。

そして、少年が看護師の代わりに部屋の扉を閉める寸前に、次からは勝手な行動はしないようにと言われそえして少年は「またね」と言い笑って扉を閉めた。

「またね」……か

本当にまたねなんてあるのだろうか。

いつ会えるかなんてわからないのにどうして確信ありげにそう答えられるのだろうか。

僕はベットの上に乗り窓の外を眺めていた。

今日はいつもと違う出来事があり、とても新鮮に思えたでもまぁ、きっとあの少年に会うことはしばらくないだろう。

第一名前を聞いた所で、何処の部屋かなんてわからないし、僕から訪ねても他の看護師たちは教えてはくれない患者同士の接触で何が起きるかわからず危険だからと聞いたことがある、あとあの兄と言っていたやつもあんな見た目でこんなよくわからない病棟にわざわざ看護師にもなって来たのだ余程あの弟が大切なのだろう。

こんな拘束器具だらけで危険性の高そうなやつに大切な弟をわざわざ会わせるなんてそんな事しないだろうし

……だが疑問がある一体あの少年は、何があってこの病棟に入院し足を拘束されているのであろうか、立ち上がるとき手伝ってくれたあの少年の白い肌には自傷行為をした形跡など全くなかったかといって薬物関連ではないのも使用している言語や行動からわかる事だ。

特に患者同士共通などないしやはりこの病棟は一体なんの理由で人が集まり構成させているのか理解ができない。

まぁ、別にしようとも思わないが考えてみると可笑しな点があまりにも多すぎる。

僕は、ため息し頭を左右振り考えるのを止めベットに横たわりまた眠りにつく。

今日に限って珍しい事や慣れない事ばかりしたせいで異様に眠くなった、またいつか、あの少年たちに会えたら

何か話の一つでも聞いてみるか……

伝わるか不明だが

それじゃあ、「またね。」

なんて……馬鹿みたい。

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