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写真の景色のどこにも、私はいない。

 

 自撮りとかそういうのじゃなくて、私は風景とか、とにかく自分以外の何かを写真に収めることが好き。誰に習うでもなく、誰に善し悪しを指摘されるでもなく、自分の好きな時に好きなように撮る。

 

 今にも泳ぎ出しそうな魚の群れが、深い青の中に切り取られている。

 あぁ、ここはとても静かだ。

 

 顔を寄せ合う親子が、こちらには気づかない様子で笑いあっている。

 あぁ、ここはとても温かい。

 

 物で溢れた部屋に差し込む橙は、主人のいなくなった世界の住人に、命を吹き込むようだ。

 あぁ、ここはとても輝いている。

  

 ここにはリアルとは別の幸せが、詰まっている。それでいて、どこまでもリアルだ。そしてそのリアルは、いつでも私を旅に連れていってくれる。


 写真の景色のどこにも、私は行ける。

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