誤差
バイト先の時計は五分遅れている。だからちょっとくらい遅刻しても実は遅刻にはならない。
僕の携帯は世界に流れるありのままの時間を映す。デジタルだから当たり前だけれど。
帰りに送ってくれる先輩の車のディスプレイは、五分先の未来を映し出す。まるで最先端を走り続けているかのように。
みんながそれぞれ自分だけの世界を持っていて。そこには自分だけの時間が流れていて。僕の時間が世界と同じように流れてるのは納得いかないけれど。あまり好きじゃない先輩の時間が最先端を走っているのは認めたくないけれど。
共有しているはずの時間は、画面が映し出すズレによって個人のものになる。見かけだけかもしれないけれど、その時間のちょっとの差が多様な世界を形作っている。僕の時間も、世界の時間とちょっとくらいズレているかもしれない。
僕に流れる時間は僕だけのものだ。
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