イーター
堺
イーター
その生物の存在については、どんな文献にも載っていない。その生物の存在を知った世界は、必ず滅びる運命にあるからだ。
一瞬の暗闇があり、時計の音がカチカチ聞こえたかと思うと、彼の意識はそこに在った。
違和感。
「あれ?」
思わず声に出して言った。テッドはなにを確かめるわけでもなく、手に持っていたコミック本のページをパラパラめくった。頭の中は疑問符でいっぱいだ。
俺、この本いつから読んでたっけ?いつから自分の部屋で、ベットの上で?
目と耳で色々なことを確かめつつ、取得した情報と脳の中の記憶とが、まるでジグソーパズルのように合致していく。
自分の名前はテッド。十三歳。父、母、妹がおり、学校の成績はいたって普通…いや、音楽は少し苦手。人前で歌を歌うのはあんまり好きじゃない。このあいだも音楽の授業で声が裏返って、赤っ恥をかいた。
機械いじりが好きで、将来の夢は整備士。妹は歌ったり騒いだりが大好き。しょっちゅう家に友達を呼ぶ。テッドの机の上には、妹の技術課の宿題が置いてある。妹がそれを置いていったのは三十分ほど前の事だ。
「兄貴こういうの得意でしょ?頼むよ。今ね、ママとカップケーキ焼いてるんだ。明日テレサの誕生日なの。テレサって分かるでしょ?そうそう、こないだ家に来た子。髪がちぢれ毛の子。美味しく焼けたら兄貴にも食べさせてあげるからさ、ね。お願いね」
今さっきした会話のように思い出せる。いや、実際今さっきした会話のはずだ。そう言えばほんのりと、ケーキの焼ける匂いがする。テッドは本を置き、ベットから降りた。机の上の、ほとんど手つかずのオルゴールの部品。プレートに名前だけ掘ってある。グレース。妹の名…
記憶は確かだ。なのに、なぜ?どうして?いったいなにに違和感を感じているのか?納得がいかないのか?とってつけたような人物設定。小説でも読んでるみたいだ。
テッドは悪寒を覚えた。体中の皮膚に鳥肌が立って、落ち着かない。身の回りにある全てのものがハリボテで、今にも崩れてきそうな、今にも歪んで、自身を飲み込んでしまいそうな。叫びたくなるような衝動。
具合が悪い。気持ち悪い。病気かな?
「兄貴!」
妹がキッチンから戻って来た。顔色が悪い。その不安そうな顔は、今の自分の精神状態を映し出す鏡だ。テッドは顔を見ただけで、妹も同じ気持ちなのだと知った。
「グレース」
「兄貴、なんかヘンだよ、ヘンな感じだ。今、みんな居間に集まってるよ」
テッドとグレースは階段を下りて居間に向かった。なぜか、どうしても両親の存在を確かめたかった。
いた。二人は書斎から大きな段ボール箱を持ち出して、中身を床に広げていた。もう何年も開いていないアルバム。二人が独身の頃からの、思い出の品々もいっしょにしまってある。どれもこれも埃をかぶっていた。
「父さん、母さん。なにしてんの…」
「ああ、テッド!いたのね?ちゃんと“いた”のね?」
ほんの数時間前には顔を合わせたはずだ。なのに、なんだ、この感覚は?自分の母親がそこに存在する事実。触れられること、抱きしめられることに“意外さ”を感じるのは。
四人はしばらく、抱き合ったり声をかけ合ったりして、互いの存在を確認した。怒涛の勢いがおさまり、父親がつぶやくように言った。
「俺達は家族だ」
「うん」
「うん」
「ええ…」
「ちゃんとそれぞれに過去があり、名前があるし、記憶も感情もある」
「そうだよ!」
「そう!」
「そのはず、よね…?」
まだ自信が持てない母親は、すがるような目でアルバムを見つめていた。ふと、思いついたようにテレビを見た。
「…世の中は、どうなってるのかしら」
「どうなってるって?どうもなってるはずないじゃない、母さん。だって、どうなるったって、どうなるって言うのさ?」
「兄貴、言ってること分かんない。落ち着いて」
「だけど、母さんの言うことも分かるな。テッド、テレビのリモコン持ってきてくれ」
「まったく…みんなどうかしてるわよ」
と言いつつ、グレースは兄の手をしっかりと握っていた。そうしていないと、存在が消えてしまうとでも言わんばかりに。
テッドがテレビをつけると、四人は食い入るように画面を見た。互いの存在を確認した後、世界の存在を確認したくなったのだ。
果たして“世界”は存在するのか?自分たちの他に人間は?人間社会は?動物たちは?自然界は?広大なはずの宇宙空間は?それを見ないことには、不安で不安でしかたがない。
「臨時ニュースをお伝えします」
見慣れたニュースキャスターの顔。
「現在、世界各地で謎の現象が広がっています。これがその映像です」
中継らしい。どこか農園の風景。その上空に、暗雲のような黒いものが映り込んでいた。しかし、奇妙なことに、太陽がさんさんと照らし出すその風景に、暗いところはひとつもない。雲ではない。絵はがきの絵に黒インクをこぼしてしまったみたいだ。しかもそのしみはどんどん広がってゆく。
「あれはいったいなんでしょう?鳥の群れでしょうか?もう少し拡大して見ましょう」
カメラがズームした。
「あっ!」
母親が思わず口をおさえた。テレビを見ていた四人は凍りついた。いや、きっと、全世界の住人たちが、その異形の生物の姿を確認した、あるいはその存在を感じとった瞬間、人も、動物も、植物も、昆虫も、胎児も、星々も、微粒子も。
宇宙そのものが自らの滅びを悟った。
「未確認生物の専門家に解説していただきます。先生、あれはなんなのでしょう?」
「いやぁ、前例がないのでなんとも言えません。しかし観察の結果、次のことだけは確かなようです。
やつ らはものすごい勢いで食っているんです。空間を!」
そう。その生物。体のほとんどが口で、大口を開けて群れを成して、どこからともなく現れたそれは、空間を食っていた。やつらが食った跡には途方もない虚無が広がっていた。虚無とは真の意味での“死”であり、そのことは誰に教わらなくとも、生き物としての本能で理解できた。あまりに残酷な境地。
「あなた!私怖いわ!怖いわ怖いわ!みんな死ぬわ!」
「おい、しっかりしろ!」
母親はパニック状態だ。報道がさらに不安を煽る。
「自由の女神が、万里の長城が、怪物の浸食によって次々と虚無に飲まれてゆきます!」
父親は拳をにぎりしめた。
「くそ、エイリアンめ!」
「エイリアン?」
「そうだ、あんな生物、地球に存在するはずがない。やつらきっと宇宙からきたに違いない…」
「だけどさ、パパ。宇宙人だって宇宙“空間”に住んでるはずでしょ?空間を食べる宇宙人って、どゆこと?」
「知るか!パパだってSFは詳しくない。だって、他に考えられるか?とにかくどこかへ逃げなくちゃ。荷物をまとめるんだ、手伝えテッド!」
テッドは父親に命令されて、避難用具の入ったリュックサックを四人分引っ張り出し、母親と妹をせっついて玄関へ急いだ。
「逃げるったって、どこへ!?」
「いいから急げ!」
強引に娘の手を引いて玄関を出た、瞬間。
絶望。
「………………マジ、かよ…」
父親は娘の手を離した。リュックも肩から落とした。四人とも立ち止まった。すでに浸食は近辺まで及んでいた。テレビで見たインクのしみのような黒い虚無。人も、家々も、街も、遠くに見える山も、太陽までもが…
「太陽も浸食するって…どゆこと?」
「さあ…」
「だってさ、太陽がなくなったら普通、暗くなるよね?って言うかそれ以前に、もっとヤバいことになりそうだけど。重力?とかさぁ…ねぇ、兄貴?」
「知らないよ、僕に訊くなよ…」
父親は力なく座り込んだ。それから手を組み、少し考え、観念したように目を閉じた。
「みんな、おいで。お祈りをするんだ」
「あなた…」
「パパ…」
「父さん…」
「もう他にできることはなにもない。あんな人知を超えたものを相手に、じたばたしてもしょうがない」
四人は家の前の階段に座り、無力な小動物がするように身を寄せ合った。
「天にまします我らの神よ…」
父親がふるえた声で祈りの文句を詠唱した。たとえようもない恐怖から少しでも逃れるために。あまり信心深くはないテッドも、一心に耳を傾けた。
怯えて死を待つ以外になにもできない彼らは、知る由もない。
その怪物の正体は“
要らなくなった世界を食らい滅ぼすのがその役割だ。
ではなぜ、この世界が“要らなくなった”のか?
解答を得るには“別の世界”の20××年の未来を垣間見なくてはならない。
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異世界。20××年。
タイムトラベル事業を営むタイム社の本社ビル。タイム社が開発した簡易式タイムマシンのおかげで、学校の修学旅行で学生が利用できるほど、タイムトラベルが一般化していた。
S校の生徒たちがガイドロボットの後に従って、タイムマシンの搭乗口へ来た。
「はぁーい、それではS高の皆さま、これより楽しい楽しい時間旅行へ出発しまぁーす。ガイドのわたくしにしっかりついてきて下さいませぇー」
ガイドロボットは明るく呼びかけたが、S校Dクラスの三人は乗り気でない。
「つーかまじダルいんですけどー」
「せっかくの修学旅行がタイムトラベルなんて、ついてないわ」
「タイムトラベルって規制ばっかで、めんどくさいんだよなぁ」
「ほんとほんと、旅費返せ」
「聞いたか?F校はロケットで、月都市へ行くんだってよ」
「そっちの方が良いなぁ」
「まじウザいんですけどー」
タイムマシンは半球体の乗り物で、外観はとてもシンプルだ。文句たらたらな三人だが、実際に見るのは初めてだった。
「皆さま、こちらがわが社のタイムマシンになりますが、お乗りいただく前にいくつか注意事項がございます」
先生が生徒たちとロボットの間に割って入った。
「うむ、私が話そう。みんな、旅のしおりはよく読んだかね?」
「穴が開くほど」
「つか先生、テストで全員百点取れるまで暗記させたじゃん」
「もううんざりだよ」
「はっはっは、まあそう言うな。タイムトラベルと言うのはな、それほどまでに万全を期して臨むべきものなんだ」
「なら月旅行の方が良かった」
「でも恐竜が見られるんだぞ?」
「見るだけでしょ?」
「触っちゃダメ」
「うむ」
「捕まえちゃダメ」
「そうだ。過去に存在する一切のものに触れても、破損しても、未来に持ち帰ってもいけない」
ここで三人は大ブーイング。
「そんなの嫌だぁ!」
「お土産ナシの旅行なんて旅行じゃないわ!」
「お土産が無いだって?ふふ…お土産なら、あるさ」
先生は胸に手を当てて言った。
「私たちの…心の中に…!」
キモッ!!!
三人の心の声は一致した。ともかく、彼らが時間旅行に出かけた経緯はこのようなものだった。
紀元前。翼竜が空を飛ぶ、ジュラ紀。
「うわぁ…こいつはちょっとしたもんだなぁ!」
濃い緑の匂い。太古の地球の原始的な風景。
「ま、まぁ、ちょっとは迫力あるわね。でも、立体アトラクション映画と大差ないわよ。どうせ見るだけで触れないんだし。ちょっとあんた、写真なんか撮ってどうすんのよ。画像なんかCGで作ったのと変わんないじゃん」
「あ…そっか」
息をのむほど美しい姿の鳥が、近くの木の枝に舞い降りた。声も美しい。きっととっくに絶滅した種だろう。少女はもの欲しそうな顔で見つめる。
「…旅行の醍醐味って言ったら、やっぱお土産よ。あの鳥欲しいなぁ」
「俺は恐竜をハンティングしたいね」
カメラを手に持った少年は、近くの茂みで昆虫を見つけた。生きた宝石のように美しい虫。先生も他の二人も、ちょうどべつのことに気をとられていた。
「へへ、一匹ぐらい…」
少年は虫を鞄にしまった。
「では皆さん、そろそろ別の時代へ移動しましょう」
ガイドロボットがそう言うと、全員タイムマシンへ乗り込み、次の時間移動に備えた。しかしその時、アラームが鳴り、ロボットがマシンのメーターから異常を見つけた。
「たいへんです。私たちの世界の“存在率”が危険な値です。このままでは元の時代へ帰れません」
「なんだって?」
「どう言うこと?」
「存在率とは、読んで字のごとく“存在する確率”のことです。私たちが過去に干渉したことで、未来が変わってしまったんです」
「そんな!私たちはただ見ていただけよ?未来が変わるほどの干渉なんて…」
「しかしバタフライ効果と言う言葉がある。チョウの羽ばたきほどの些細な出来事が、遠くの天候にまで影響を及ぼす…とかなんとか。みんな、なにか心当たりはないか?うっかり虫を踏みつぶしてしまったとか、樹木に傷をつけてしまったとか」
「ないわよ。じゅうぶん注意したもの」
「俺も。まぁ、息を吸ったり吐いたりしたくらいの干渉で、未来が変わるって言うなら別だけど」
「それくらいは問題ありません。運命にはある程度の“弾性”が備わっています。多少の干渉を加えられても、元に戻ろうとするわけです」
「ふーん、そう言うもんなの…」
一人だけ黙りこくっている生徒。
「あんた、さっきから妙に大人しいわね。なにかやましいことでもあるの?」
「ギクッ」
「おい、今こいつ“ギクッ”って言ったぞ。鞄の中見せろよ」
鞄の中にはさっき捕まえた虫の…死骸が。
「あ、死んでる。しおりの間に挟まって潰れてら。あーあ、飼いたかったのに…」
「お前、なんてことしてんだよ!」
「そうよ!先生の話、聞いてなかったの?」
「え…だって、これはチョウじゃないし…運命には弾性があるんだろ?ねぇ、大丈夫だよね?これくらい」
ガイドロボットと先生は、左右にゆっくり首を振る。
「君、テストの時に“一夜漬けマシン”で丸暗記したね?だからダメなんだ、あの機械は。ただ覚えるんじゃなく、要点を理解しないとね」
「先生…僕、僕…ひょっとして、いけないことした?」
「もちろんだ。チョウだろうとコガネムシだろうと、同じことだ。いいかい?君がこの虫を殺したことで、未来の歴史年表は二つに分かれたんだ。虫が死ななかった場合の世界Aが、私たちの帰るべき未来。虫が死んだ場合の世界Bが、新しく生まれた別の未来だ。今タイムマシンに乗って未来へ帰ろうとしても、Bの未来にしか行けない」
「だけど、たかが虫一匹でオーバーじゃない?AとBの世界に、そんなに違いがあるの?」
「生き物は運命への影響力が強い。例えで説明しよう」
先生は小型の投影機で空中にイメージ図を映し出し、説明した。
「これがAの世界。
この虫が生き延びて子孫を残し、群れになったとする。
虫をカエルが捕食し、ある年、カエルが大発生したかも知れない。そのカエルを食べて、キツネが生き延びたかも知れない。キツネを食べて、ライオンが生き延びたかも知れない…
とまあこんな具合に、食物連鎖が繋がって、数百年、数千年、寸万年と、途方もない年月が経過する。すると、やがて最初の人類が現れ始める。
ここに一人の原始人がいる。氷河期の真っただ中、彼は自分の家族を養うのに必死だ。そこでやっとこさ捕まえたのが、さっきのライオンの子孫さ。一家はその肉を食べて生き延び、多くの民族の始祖となった。現代を生きる私たちの文明の、基礎を築いたのかも知れない。これがAの世界。
じゃ、Bの世界は?原始人から起こるはずだった子孫たちは?文明社会は?…
もちろん、これは極端な例だよ。だがね、今は紀元前なのだよ、紀元前。キリストも生まれていない、アメリカ大陸も発見されていない。なにがどう影響するか、まったく分からないのだ」
その通り。彼のたったあれだけの行為が未来を変え、その瞬間に新たな歴史年表へと書き換えられた。それが、テッドたちの存在する世界である。
「ええ!?だったら…このまま未来へ帰ったら、どうなっちゃうわけ?」
「断言はできない…だがおそらく、似てはいても微妙に異なる歴史、微妙に違う世界へ帰ることになるだろう」
「も、もう二度と…もとの世界には戻れないのね…」
三人の生徒は顔を見合わせ、泣き出した。
「お父さーん、お母さーん!うわぁーん、うちに帰りたいよぉー!」
「バカッ!なに泣いてんのよ、全部あんたが悪いのよ」
「だって、だって知らなかったんだもん」
「この野郎知らないで済むか!俺、やりかけのゲームを残してきたんだぞ。もしも未来が変わってて、セーブデータ消えてたら、どうしてくれる」
「私の愛犬のココアちゃん。未来へ帰ったら、プードルからパグに換わってるかも知れない…どうしてくれんの、あんた!」
二人で一人を責め立てた。しかし三人の生徒に比べ、先生は穏やかだった。ロボットが先生の顔を見て「…そろそろご説明してもよろしいですか?」と伺った。
「ああ、そろそろネタバレといくか。みんな、落ち着きなさい。ちゃんと未来へ帰る方法はある」
「本当!?」
「はい。我が社はこのような状況も想定して、快適な時間旅行サービスを提供しているのでございます。虫をわたくしにお貸し下さい」
ロボットは虫の死骸を受け取り、目から光線を出した。光線を当てられた虫は生き返り、なにごともなかったかのように飛んで行った。
「生き返った!?」
「過去へ行って古代の生物を損じてしまうのは、よくあることです。そのためわたくしには、様々なケア能力が備えられております」
「なぁーんだ、良かった!」
ロボットは生徒たちが歩いた道のあちこちに光線を当てた。
「さぁ、タイムマシンのメーターを見てみましょう。これで存在率も安定して、わたくしたちは未来へ帰れるはずです」
「一件落着ってわけだね」
「…って言うか先生…実は知ってたんでしょ?」
「俺たちを脅かすために、わざと黙ってたんだ」
「人聞きが悪いなぁ。私は教師として、君たちに学んで欲しかったのさ」
先生は目を閉じて言った。
「歴史の…重みってやつを…!」
キモうざっ!
三人の心は一つだった。とりあえずの大団円。
ただし、Aの世界に住む彼らにとっては。
Bの世界に住む、テッドたちにとっては?生まれた発端がなんであれ、彼らはそれを認識できない。彼らにも過去、現在、未来があり、記憶、意識、感情がある。
ところがそれは、タイム社のロボットにより再び書き換えられてしまった。もちろん悪意はないだろう。冒頭で述べた通り、その生物の存在についてはどんな文献にも載っていない。
Aの世界はBの世界と接触するすべがない。二つの世界は決して共存できないのだから、歴史はつじつまを合わせなくてはならない。
そのために使わされた異次元からの使者、それが
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時空変わって、テッドたちの住むたそがれの世界。
「きゃあぁー!!」
「パパぁー!!」
怪物が家族を襲う。父親は逃げ遅れた妻と娘のもとへ走り寄る。
「ちくしょう、もう逃げ場が…」
怪物の食い跡、暗黒空間に取り囲まれてしまった。父親は妻と娘を腕に抱いてその場に残り、息子に向かって叫ぶ。
「テッド逃げろ!」
「嫌だ!父さん、母さん、グレース!みんなを置いて僕だけ行けないよ!」
「だめだ!お前はこっちに来るな!二人のことは父さんにまかせろ。行け!お前だけでも…」
テッドはためらうが、怪物の恐ろしい姿が視界に入ると体が勝手に動く。
「うわぁー!来るな、こっちに来るな怪物…うわぁぁーーー!!!うあ
沈黙
イーター 堺 @sakai4510
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