第8話

昨晩

いつものように布団に入ったまま思いつく文章を携帯に打ち込みそろそろ寝ようかと思っていた時、遅くまで仕事していたノリオくんがいつものようにゆっくりご飯食べてマッハでお風呂に入ってそそくさと2階に上がってきた。


眠そうな声でおやすみなさいと体を息子側に向けて寝ようとすると

隣の布団にゆっくり入りながらノリオくんは喋り始めた。


どうしてあなたは失業保険についての手続きをしようとしないのかと聞いてきた。


私は説明した。

結婚してすぐ子供が出来き、しかも体調を悪くして仕事を辞めざるを得なかった私は、出産しあらためて仕事を探そうとした時に失業保険をつかったことがある。

その時に結構手続きに時間がかかり、しかも貰うための講習会みたいなこともしたし、かなりめんどくさかった覚えがあったので

すぐ仕事すればいい話じゃないかと思ったからだと。


しかし

ノリオくんはどうして貰える権利があるのに貰おうとしないのかわからない。どういう考えをしているのかとかなり厳しめに問いつめてきた。

その夜は私も病み上がりでグッタリしていたからとりあえず、明日ハローワークで手続きできるかきいてみればいいのね?と伝え

申し訳ないがそのまま寝てしまった…。


朝は朝で私は忙しいし

ノリオくんはぎりぎりまで寝ている派なので

お互い話すまもなくノリオくんは仕事、私は面接へと急いだ。


面接も終わりハローワークに手続きできるか聞いてみた。

すると私の離職票が自己退職になっているためすぐには失業保険がでないとのこと。

勤めていた社長から娘が帰ってきて店を継ぐことになったからすまんが辞めてくれと言われたが、来年の3月いっぱいまでということだった。

しかし、普段から1人でもそんなたくさんの仕事もないのに今度から2人でこの何もしない時間を過ごさなくてはいけないことが私にはもう耐えられなかった…

なので社長に

すいませんが今月いっぱいで辞めさせてくださいと言ったのは確かに私なのだ。

それはしょうがない。私の責任だ。


私は怒られるの覚悟してノリオくんにLINEした。


ノリオくんは

わかった。とひとこと。

そのあとにわが家のお金の状況を明確にした紙を送ってきた。

わが家の家計はすべて、ノリオくんに任せている。私はノリオくんから1週間の食費兼消耗品費を頂いてやりくりしているだけでお金に関してはノータッチで生活している。

だから今わが家がどんな状況なのか正直わかってなかった。


しかし

それを見て

なるほど…私の給料は子供たちの蓄え分として成り立っていたのがやっとわかった。


うむうむと納得しているとまたLINEがきた。


先ほど私も

こうやって普通に生活できてるし、子供たちの最低限の物も買えてるし、遊びにも行けている…

パチンコだってノリオくん行ってるのだからきっと大丈夫と思っていた。

けどノリオくんが教えてくれたからわかった。

なるべく早く見つけて仕事頑張る!!

と返したのだが

それに対してノリオくん、とくにパチンコのことについてカチンときたらしく


パチンコについて

ゴメンだけどゆかさんのパートの年収以上は儲けているのだからそれを生活の足しにしているのであって、余裕があるからパチンコをしているわけではない。と返信してきた。



衝撃だった。

私が1年かけて私なりに精一杯働いたことが

ノリオくんが時間の合間にちょっとやるパチンコより価値がないという事実が私の心を破壊した…。

言葉が出なかった…。


しかし

この事実に対して悲劇のヒロインぶって

逆ギレするのは違うと思い

ただこれが現実なんだとひたすらLINEを見つめていた…。


するとまたノリオくんから返信がくる。


ながながとあったが面倒なんで私なりに簡単に説明すると

とはいってもパチンコ業界も厳しくなってそんなに儲けることができなくなるから

そろそろゆかさんにフルタイムで働いてしっかり蓄えをキープしていきたいとのこと。

節約もできる範囲でいいからやってほしい。

あとついカチンときてお金のこと厳しく言ってしまってごめんねとも書いてあった。


しかし私はもうそんな言葉なんて鼻くそ、いや耳くそぐらいにしか聞こえなくなってなっていた…。


5分ぐらいたってやっとほとほとと涙がでた。

そしてそれと同時に悔しさと悲しさが襲いかかってきてあっという間に怒りに変わった。


ふーーん…

私の存在ってパチンコ以下ってことか…


わかってはいたけどこうやって突きつけられるとかなり凹むね。


けどこれが現実。

だったらパチンコ以下でもなんとか自分の世界で頑張って働く。


そしていつかゆかさんがおってよかったとノリオくんに泣きながら言わせてやるわ。


見とれ、ばーか。


とLINEに打ち込んでいたら

インスタからメールが…


涙を拭きながらそのメールを開けてみると

なんとコツコツ投稿していた写真があるコンテストの賞を受賞したとのこと。


驚きを通り抜けて

ほらみろ!!ばーか!!と急に叫んだ私に慄く猫達を撫でくりまわした。


今年いちばん凹んでいるこの時に

今年いちばん嬉しいことが同時に起きるなんて

マジで人生ってプラスマイナスゼロなんだと悔しさと嬉しさの入り混じったようわからん頭で妙に納得した昼下がりでした。


















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