第29話 やさしいうた

夢と現実のはざまで聴いた

夜の中を流れるその歌は

朝の訪れを願う思いに

そっと触れた後はかなく消えた

そこに感じられる暖かさは

まるで祈りのように美しく

取り残された激情でさえも

柔らかく両手で包み込んでいく

歌に抱かれたこの体を

壊すことは誰にもできない

切なく溢れる旋律だけが

空虚な心を貫いて

流れる血にはくちづけを

傷を癒やすようそっと落として

無意識に口ずさむ希望を

胸に降り注ぐ言葉にかえて

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