第16話 ひつじのしっぽをつかむ

眠れない夜にひつじを数えて

息苦しさをごまかそうとしても

どうしようもないむなしさに

どんどん目だけは覚めていき

もうやさしい夢さえも

僕の手からは転がり落ちて

果てしない暗闇の中

抵抗できずに沈んでいく

そこはあまりにも静かで

自分の息づかいしか聞こえない

僕の頭のまわりを走る

ひつじだけが増えていく

これが最後のあがきだと

やみくもに手を伸ばす

ほんの少し青みがかった

深夜の黒に浮かぶ指先

好きなように走り回っていた

白いかたまりに触れた

そして僕は力を振り絞り

ひつじのしっぽをつかんでみる

現実感を伴った

まどろみがふわり降りてきて

白んできた空を見ながら

まるい眠りに落ちていく

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