第9話 窓に浮かぶ月

小さくゆれた月のカケラ つかもうとして手を伸ばして

何もふれられず はじける残像だけがまぶたに焼きつく

ガラスごしの白い光 ゆらりゆらりと風にあおられる

儚げな姿にどうしても 胸を締め付けられて

妖しげな微笑みから垂らされた幾本ものクモの糸

掬い上げられるのか搦めとられるのかは分からずに

それでも迷いなく差し伸べた腕はきっと弱い自分で

がんじがらめにされる息苦しさに喜びを感じている

月夜に溺れる 依存と拒絶の狭間にゆれながら

それがたぶん潤んだ月が見せつけてきた遠い幻だと知って

月夜に溺れる 憧れ憎んだ夜を彩る光

明日には晴れた空の合間 白骨と化した月が浮かぶ

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