もう、ひとりぼっちはイヤです。

きたひろ

プロローグ

終わる日(月曜日)

 そういえば何度目だっただろうか。この光景を見るのは。


 目の前に立ち上がる巨大なきのこ雲。その周りには大気圏を飛び出して宇宙まで届きそうな勢いで吹き上がるマグマの赤い軌跡。


 爆心地になっているのは自分が住んでいた町だ。巨大な数万人が済む築40年以上の古いマンションが地平線まで立ち並び、川を挟んだ向こう側には無数の煙突とパイプが増殖したように集まる工場地帯。そんな時代から取り残された町が突然真下の地面から吹き上がった爆発で消し飛んでいる。


 ミチビキ・ツキエは何度もこの光景を見た。あの町にはたった一人の身内である祖父とたくさんの友達がいる。彼らはわけも分からず――いや、起こったことも気が付かずにみんな死んだだろう。


 最初は嘆き悲しんだ。どうしてこんなことになったのか。どうにかして助けられないのか。


 そう思ったのは何回目までだっただろうか。100回目ぐらいまでは涙を流していた記憶がある。でも、今では何も感じなくなった。いつ無心でこの光景を見ていられるようになったのだろうか。


 ……ハァ。

 ツキエはため息を付きながら大惨事に背を向ける。


 どうでもいい。もう考えても仕方がない。もう何もできることはない。あらゆることをやり尽くしてもう何をしたらいいのかも思いつかない。


 自分にできるのはこの終わることが宿命付けられた世界を終わらせないことだけなのだから。

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