百三振目 東京行状記2
東京に行ったら挨拶したい店、それはもちろん刀屋さん。
今回は挨拶だけでなく一品頂きたいものがあり、少し寄らせて頂いた。ただし刀でなくて鐔ですが。
まずは雑談として気になる話について。最近はネットの怪しいサイトを中心に出回る偽物が少し違ってきているとの事です。
1)現代刀の偽物
最近は現代刀の偽物が増加傾向にあり、注意して欲しいとのこと。
物故刀匠(特に人間国宝)の作は茎が真新しく偽造しやすく、かなり多くの偽物が出回っているそうな。
もちろん存命刀匠の偽物も多く、生きている人の作なので偽物などないだろうといった心理や、なおかつ存命刀匠には鑑定書が発行されない点につけ込んだ偽物が増加中。
一発で偽物と分かる偽物もあれば、刀剣商がみて直ぐに分からない偽物もあるそうで「実はうちもやられました」と嘆いておられた。
この件は刀剣界でもかなり問題になっているそうで、存命刀匠作の偽物への対策が検討されているそうな。何をするかは、まだ噂段階なので触れはしませんが……まあ、やる事は一つしかないのは確実ですね。
なお日刀保は存命刀匠が作刀した品については、概ね内容を把握しているとの事で……これは対策が開始されたら、ひと波乱ありそうですね。
相当数の偽物が出回っている現状を考えると……もし現代刀をお持ちの方で、ちょっと品的に怪しいのであれば、対策が始まる前に手放した方が良いかも。
2)現代鐔の偽物
こちらは著名鐔師の偽物を製作するだけではなく、古作の写しを古作として売る場合が多いそうです。古作写しを上手に処理し年数を(十年二十年)置いてしまうと、もう古作に紛れ素人目では全く判断出来なくなるそうです。
ただし鑑定では簡単に判明するそうなので……鐔の購入も要注意が必要。
3)重要刀剣の偽物
これは別の店での話ですが、ついでにここで。
最近出回っている偽物について。
・証書類は本物でも、刀身は現代刀や刀ですらない代物(日本刀形状の鉄板)
・証書類も含め全て偽物。実在しない証書や、または過去の合格品の偽造証書
こういった偽物がかなり増えてきたとの事です。
昨今は詳細画像が入手しやすいため、目釘の位置や銘だけでなく錆び具合まで似せてきて、かなり精巧になっているそうです。
で、その刀剣店に持ち込まれた偽物の刀(日本刀形状の鉄板)と偽重要証書を見せて頂きましたが、パッと見では分かりません。じっくり見ると鉄色や端々の細かい部分が「おかしい」と分かるのですが、これ画像では殆ど分からないレベルです。証書も紙質は同じで透かしがない以外は、ほぼ同じ。
ついでに特保の偽鑑定書も見せて貰いましたが、これも本物としか思えなかった。どうやって見分けるかは、やっぱり透かしと証書の中にある日刀保の隠し印……保は少し見つけにくいでしょうが、機会があれば探してみて下さい。
なお、そうした偽物が流通しているのはネットの怪しい場所。
怪しいという書き方で濁していましたが、あまりに被害が多いのではっきり言います。お分かりと思いますが、オークションです。
ヤフオクは勿論として全てのオークションで大量に流通しています。実店舗で社名をあげ自社オークションをやっている以外は、もう偽物の温床です。
安いのは当然偽物ですが、安ければ偽物という論法も通じず、上記3)の偽物で騙された人は、そこで1000万に近い金額で買ってしまい被害にあっています。
もうこのままでは、刀剣に興味ある人が次々騙され、それで刀剣から離れてしまいます。こちらの対策もされねば、いけないと思うのですが……そこが偽物の巣窟であった方が逆に良いのか……難しいところですね。
ちゃんとした店では、しっかりと本物の日本刀を売っています。
日本刀を買うのであれば必ず実店舗に足を運んで下さい!
それはさておき、今回は鐔を頂きました。
太刀師鐔で寒山博士の箱書きありといった品。しかも、これは未鑑定品のため、ややお安い。店のHPで見るなり、「これは……」と思わず感じたので急ぎ注文したものです。
他の店の品でしたら未鑑定品には絶対手を出しませんし、画像だけで注文したりはしません。ですが、このお店だけは別。刀剣関係では断トツに信用出来る店だからこそ買いました。
やはり信用できるという店を見つける事が大事です。
実物は……画像で見るよりも断然良い品でした。
画像ではやや青みがかった黒だったものが、実物はしっとりとした濡羽色(つまり黒)。金色絵の部分も輝きが違い鮮烈な色合い。手にするとズシッと重い。
しいて言うなら、金色絵が微妙に剥げた箇所があるものの、この程度なら何の問題も無いという程度。これ絶対に値段間違えてる、というのが感想。
対面で購入していますので鐔についても丁寧に説明して貰えます。他の店は売って終わりですが、この店では所有者に品の良さを理解して貰おうと、しっかり説明してくれます。
それによると「鉄を両面から赤銅で挟み、表面に微細な彫りを施したもの。だから鐔の覆輪(耳の部分)に接合部の線がグルリと一周確認でき、中心孔などの端部に微妙な被せが確認できる。こうした方法は鉄が貴重だった頃に行われている」といった事を詳しく教えて貰う。
何にせよ楽しい品が一つ増えて嬉しい。
と、休暇を満喫してますと。
職場の部下から電話が来まして。面倒くさいと思いつつ出ると……「死体発見しました! どうしましょう!」。
こんな場合どうすればいいのやら。
どうしましょうと言われても、こちらがどうしましょう。
とはいえ、実はうちの職場の敷地は広く一部が山林のため、知る人ぞ知る名所……つまりそういった事の名所でして……。
これで私が異動で配属されて四回目になります。
警察に連絡して指示を仰ぐように言っておいたのですが、続報で「回収困難場所なので、数日後に装備を整え回収するそうです」との事で、どうやら休暇中には終わらないらしい。
そうなると回収時の立ち会いに呼ばれる可能性もあり……その報告は聞きたくなかった……と思いつつ、どんよりと東京で過ごしたのでした。
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