八十四振目 所有者登録を怠らないで

 日本刀は入手後20日以内に登録証の名義変更を申請せねばなりません。とはいえ、20日を過ぎた後でも申請して問題ないので、気付いたら必ず申請するようにしましょう。万一、盗難にあったとしても登録番号の控えがあれば、それが自分の所有物との証明になりますので。

 ちゃんとした刀剣屋は購入時、登録修正用のハガキなどを渡してくれます。

 これがミソで、その際に渡されたものを見れば店のスタンスが分かります。

 つまり、宛先住所など記載され切手まで貼って細やかな気遣いをしてくれる店は良い店です。中にはハガキすら渡さない店もありますが。


 以前に東京都の登録証番号について触れたときは、昭和26年3月末で30,000番台だったかと思います。他県はどうか、昭和26年の状況は以下の通り。

 熊本県 3月末  1000番台

 福岡県 3月末  10000番台

 山形県 5月中旬 2000番台

 埼玉県 5月中旬 200番台

 兵庫県 7月末  2000番台

 例が少ないですが、東京都以外は昭和26年ものになかなか巡り会わない。ううっ、埼玉さん……。

 その代わりとして他の年代は。

 大阪府 昭和35年11月 35000番台

 奈良県 昭和46年5月  12000番台

 愛媛県 昭和50年5月  41000番台

 奈良県 昭和57年7月  17000番台

 大分県 昭和57年8月  28000番台

 と、まちまちな感じ。

 こうして見ますと、各県の人口と言いますか発展度合いと言いますか……失礼ながら、そんな事が登録証番号に現れる気がします。

 それはさておき、登録番号777番に巡り会えたので少し嬉しい気分。


 登録証の古いものは青字で書かれる場合が多く、恐らくこれは万年筆。

 手書のため凄く読みにくい場合あり、達筆すぎ判読不能あり。しかし時代が新しくなると、今度は子供か? という字もあって……これはこれで萎えてしまう。

 書式は定まっているのですが、そこへの記載要領はまちまち。

 登録番号はスタンプで押してあるのですが、「1111」と「壱壱壱壱」といった違いがあります。たとえば「弐九壱○八」とあると、なかなか読みづらい。

 あげくスタンプが様式の印字に重ねて押してあると数字が読めなかったり……。

 もちろん登録年の方も同様で、素直に「昭和26年3月31日」とあればいいものを、「昭和廿六年参月卅壱日」、「昭和弐拾六年参月参拾壱日」、「昭和二拾六年三月三拾一日」とまあ、県によってまちまち。しかも手書きだったりスタンプだったり統一性がない。

 銘文記載の箇所も、表欄と裏欄に各々「(無銘)」や「無銘」があるかと思えば、真ん中に一つだけ「無銘」とあったりまちまち。あげく! 手書きのため……連綿体で記され読めない。旧字で書かれ読めない。走り書きで読めない。癖字で読めない(金象嵌銘が会男嵌銘とか)。


 提出後、「届出内容が登録証原本(原票?)と一致しません」といった連絡があると最悪です。登録証の誤字脱字、記載ミス、寸変更などなど原本台帳と相違がある場合は再交付になります。最悪は新規発行という場合も。

 そうなるとどうなるか。

 現物確認審査となって、申請書や申立書、現登録証、茎の写真などを提出。早ければ1~2ヶ月でやっと真新しい登録証が再交付される。この辺りは刀剣屋で購入していれば、そうそう自分でやる事はないですが。

 なお、「再交付」と押された登録証ですが、これまた赤スタンプで大きい場合や、黒スタンプで控え目な場合やまちまち。

 なんにせよ、備考欄に再交付年月日が記載されます。もちろん鑑定書を取得した場合も欄外に記載されます。


 で、最悪パターンは申請して初めて判明する未登録。

 番号があるのに何故に未登録か……つまり登録証が偽造です。

 こうなると警察が絡んできます。容疑はなんでしょうか? 公文書偽造か銃刀法違反か、下手をすると窃盗などが疑われるかもしれません。

 聞いた話では、そこまで疑われなかったものの、やっぱり不快な待遇を受け何度もやり取りがあり、さらには新規登録として刀剣発見届けから行わねばならず凄く面倒だったようです。

 こうなると面倒そうなので、申請をしない方が良いような気が……が、これは悪手。どのみち売却時に判明しますので、そうなると今度は偽造改竄の疑いを強くかけられる事になってしまう事に。

 入手時点では偽造品を運悪く手に入れた人だったものが、売却時点では偽造品を売り捌こうとする人へと警察などの心証が変わるわけです。登録証は20日以内に申請せねばなりませんから、それをしてない時点で……もう銃刀法違反。

 こうなると余計に面倒となるので、かならず日本刀を手に入れたら登録証を申請するようにしましょう。


 といった事もあって、やっぱり日本刀はちゃんとした場所で買うべきかと。そもそも日本刀自身が偽物であるリスクは除外されますし、登録証も販売前に照会をかけて確認していますので。

 ただまあ、それでも稀にウッカリさんがいるのですが……。

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