八十五振目 重要刀剣になるには4

重要刀剣の審査についてですが、審査規定以外で一般的に言われる事として。

【古刀】

・位列や業物、刀匠のネームバリューはあまり影響しない。たとえ正宗であっても基準に達してなければ不合格(まあ、正宗なら許されるかもしれませんが)。

・在銘無銘はあまり影響せず、在銘が明らかに有利になるのは特重から。ただしこれは生ぶ無銘の事で、大磨上無銘の場合は室町以降は厳しくなる。

・磨上げ区送りはあまり影響しないが、室町以降は厳しくなる。

・目釘孔が複数存在しても問題ないが、少ない方がやや有利。

【新刀】

・位列が重視され上々作以上でなければ難しくなる。

・磨上げや区送り、茎尻を弄ったものは一切認められない(もしくは相当厳しい)

・目釘孔は少ない方が確実に有利。

・無銘は認められない

【その他】

・古刀新刀とも年紀や俗名、金象嵌銘などある方が有利。

・再刃や繕刃は歴史的価値・号があるなど特別の場合しか認められない。

・刃切れはダメ。

・研ぎは重要刀剣に相応しい格の研ぎが求められ、小錆びなどがあってはダメ。

・鍛え疵は美観を損ねない程度は許され、樋の中であれば大きめも許される


 これらは刀剣屋の経験上の主観であり日刀保の見解とは異なります。特に研ぎについては学芸員によっても言う事が違いますので……なんとも言い様がないですね。

 なんにせよ以上の条件を満たした上で、出来・健全性・状態の三要素を持って他の審査物件と相対評価。そこから上位のものが合格します。

 審査は厳密……とはいえ、黒い噂は常に付きまとう。

 最近の黒い噂は、協会への大量献金者が忖度によって大量合格しているといったもの。これはあちこちで囁かれているのですが……さて、どうなのでしょうかね。噂は噂でしかないのか、火のない所に煙は立たないのか。

 各刀剣屋が口を揃えて言う事は「今は出さない方が良い」という事です。ここ近年の合格者名などを眺めれば、その理由が分かります。確かにそれを見ていると、前段の噂が流れる理由も納得です。


 重要刀剣の鑑定費用は合格22万円不合格2万円、これは会員価格のため非会員の場合は、それぞれ2万円ずつ上がります。

 結構に高いため、それを嫌がり出さない人もいるぐらい。

 申請に行きますと、キャリーバッグでゴルフかという本数を運ぶ人もいます。

 これを見ると凄い力持ちだなと感心してしまう。白鞘で一本一㎏程度とはいえど、これが妙に重い。長いせいで重量バランスが影響するからなのか、刀鞄で運搬すると二本でもズシッと肩に堪えてしまいます。

 大量申請者は明らかに業者(刀剣屋など)ですが、これには2パターンあります。自店の商品を出す場合と、客に頼まれ代理申請している場合があります。

 なお自店の商品を出す場合は、身内や名の知られぬ店員が申請する場合が多い。もちろん堂々と店主が申請している場合もありますが。


 新しい会館になってからは一階ホールでの受け付けになり、大幅に楽になりました。以前は事務室の狭い通路に並び、ちまちまと一人ずつ受け付けでしたので……。

 この申請時には特別保存の鑑定書を持って行かねばなりません。運送の場合は協会で保管してくれますが、持ち込みは持って帰らねばならない。

 現地でチラッと見て「はい、いいですよ」というだけなのですが……これが凄く運搬が厄介。厚紙なので折らないよう注意が必要ですし、バラバラに動かすと紛失の元。できれば郵送と同じ扱いで申請時に受け取って欲しいものです。

 持ち込みの場合は引換券を渡され、引き取り時にこれを忘れると受け取れない……のですが、実際には紛失扱いで、別個に書類を書いて提出する事で受け取る事が可能。ええ、何度か忘れた体験がありますので。

 とはいえ、申請時には引換券を受け取りましょう。偶に係員が渡し忘れますのでしっかり確認を(過去に2度ぐらいあった)。


 合否は封書で送られて来ます。

 しかーし合格でも不合格でも封筒の厚みはあんまり変わりません。ですから薄いからと残念がる必要も無く、開けてからガッカリしましょう。もちろん合格していれば凄く嬉しいですし、「展示」ともなれば更に嬉しくなります。

 この「展示」に選ばれるのは重要合格の中でも特に優れた品……というわけでもなく、どうにも著名刀が選ばれている気がします。

 不合格の場合は毎年出した方が良いと言う人もいれば、数年おいて(4~5年)ほとぼりを冷まし出した方が良いと言う人もいます。なんにせよ、元から合格水準に達していない場合もありますので、引き取り時に確認をする方がベターです。ただし艦内放送……もとい館内放送で「異議申し立て者あり!」と流されますが。


 余談ながら協会に行けば、やはり公益財団法人なのだなーと感じます。

 ちょっと公務員に通じる雰囲気がありまして。しかも公務員の場合より、なお緩い雰囲気があります。公務員は市民の目には弱いのですが、こうした協会は一強にして独壇場。

 そのせいか凡ミスをやらかす場合も多々ある。会員証の送付忘れがあったり、引換券を渡し忘れたり、事務の引き継ぎがされてなかったり。事務室に行くと皮肉な意味でのアットホームな雰囲気があり、若手職員の中には「ここは自宅じゃないよ」と注意したくなる言動もチラホラと。

 でも会社的な雰囲気もありまして、お偉いさんが来訪すると玄関ホールで並んで歓迎最敬礼。腰も低くご案内といった光景も見られます。

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