二十八振目 日本刀の繕いは悪い意味
日本刀でもこうした繕いがあります。たとえば、薙刀を日本刀に直す場合や、後樋を施す事も繕いの範疇に入るでしょう。
そして高く売り捌くため疵や欠点や隠すためとして行われる
今回は、この繕い刃についてです。
繕い刃とは、何らかの理由で刃文が消えてしまった場合、これを細工によって描いたものです。たとえば古刀など研ぎ減って刃がなくなった場合など、銘の良さと地金の良さを惜しんで行われる事があります。もちろん悪意としてもありますが。
なお焼き直しで刃をつける事は再刃で、これまた別の事です。
もちろん贋物で刃がない状態ですので価値は、ほぼなし。
匂出来の刃文であれば、まず刀身にマジック等で描きたい刃文を書きます。それから硝酸を付けた筆でなぞります。こうする事で、それっぽく刃文が出来るわけです。さらに、この手法で映りなども再現できてしまうそうです。
沸出来の刃文であれば、硬い針などで細かに突いて刃文を描いていきます。またはサンドペーパーの粗い部分を刀身に付け、上からコツコツと叩く事で描く場合もあります。
その他に研ぎの際の砥石の当たりで描く手法もあるのだとか。
手間と苦労をかけて行いますので、それなりの上位作や最上位作などでちらほらと。相州伝最上位、備前伝最上位、青江の上位作などの繕い刃を今までに見た事があります。
怖いのは、これが結構に流通している事です。
見分け方として、専門書では光に当て反射した感じて分かるとありますが……普通は全く分かりません。これまでに描き帽子など繕い刃を参考に見せて貰ったものの、いずれも全く判別不能。パッと見て分かるものではない。
その他の判別方法としては刃がないため真鍮(金色の目釘抜きなど)に刃を当て押してみること。それで刃が食い込めば大丈夫、つるっと滑れば繕い刃。しかし売り物で試すわけには行きませんが……。
特に江戸時代に行われた繕い刃は専門店でも判別不明。で、研ぎに出した時点や日刀保鑑定に出した時点で判明し、店と一悶着という事が多々あるわけです。
そういった贋物があるのだな……と、思っていたら……なんと、自分の持っていた刀が繕い刃だったと判明!
ドーンと絶望。
刀の価値が地に落ちた事もですが、これまで何十何百回と見ていて全く気付かなかった事に対してもショック。日刀保で聞いたところ、相当精巧な繕い刃で恐らくは江戸期に行われたと思われた上手な繕い刃で、これはなかなか見ない上手さなのだとか――嬉しくない嬉しくない!
信用して信頼している店なので、事情を話し返品をお願い。
流石に返品は難しいとの事ながら、店側も繕い刃を売ったとなれば信用問題(見抜けなかったとしてもアウト、見抜いて売ったとなれば更にアウト)。そうした兼ね合いもありまして、店側から提案を頂き納得のいく対応をして貰う事に。
繕い刃はショックながら、その対応には改めて良い店だと思いました。
なぜならば全ての店がそうした対応をしてくれるとは思わない。中には裁判沙汰になっている場合もあるのだとか。ですから今回対応してくれた事は、かなり希なケースかと。
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