三振目 鞘書きに記されし言葉

 白鞘に墨書されたものを指します。

 大量に刀剣を保有する大名家などでは、刀を確認する手間を省くため鞘に名前や番号を書いていました。たとえば徳川家であれば「三番 新藤五国光」、「四番 吉光」などと、管理台帳との符合させる内容が記されていました。

 時代が下るにつれ、次第に鑑定としての意味合いが出てくるようになります。

 この場合は「鑑定結果」「鑑定日」「鑑定人の名」など記されています。


 「○○観」「○○見」は観ただけの逃げ口上である場合が多く、言外に悪いと言っているに等しいです。つまり断れない相手から無理に頼まれ、しかし相手の面子を潰せないので仕方なく…という事ですね。

 「○○鑑」「〇〇識」は鑑定したという意味になります。

 書き手によって表現に癖があって、「鑑」「識」「見」といった人や、「珍々重々」「優品」「佳品」などの人もいます。後者の表現による差違は知りません。

 ただし、この鞘書きですが絶対ではありません。現代の鑑定とは相違がある場合もありますし、そもそも鑑定ミスもあります。もちろん鞘書き自体の偽物もあれば、中身が入れ替えられている場合もあります。

 ですから鞘書きがあるかれと、それを鵜呑みにしてはいけません。


 しかし……古い白鞘も古来からの伝来品で、一つの美術品的・工芸品的な要素があると思うのです。そこに気軽に鞘書きを施す行為が、果たして良いものなのかどうか。多少の疑問を抱いています。

 もちろん書いてある方が嬉しいのは事実でしょうが。

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