戦場の終り

 ボートには大勢の人々が乗り込み、ざわざわとしていた。

 その時。


 ドゴン! ドォンドォンドォン! ドォンドォン!


 豪華クルーズ船、アルベルタ号空そんな爆発音が響き、やがて七色に輝く爆発と炎に包まれた。


 何度も何度も爆発の連鎖が続き、船は大量の爆発によって吹き飛んでいく。

 そして、アルベルタ号はその身を海に深く沈ませていった。


「う……」


 ボートの中、優子の膝に頭を預けている拓真が気がついた。


「いって、体中が痛え……」

「もう、先輩!」


 優子がぽかぽかと拓真を叩いた。


「あんな無茶をして! 死ぬつもりですか! こっちは死ぬほど怖かったんですよ!」

「なんか、生き残っちまったみたいだな……」


 ボートの端で、安心したように苦笑する舘山寺と木場。


「もう! 先輩ったら! もう! もう!」

「そんなに叩くな、体に響く」

「そりゃ怒りますよ! あんな自殺行為みたいな事をして!」

「俺、どうして生き残ったんだ?」

「教えません! そんな先輩には絶対に教えません!」

「なんだよ……お前ひょっとして、また何かやらかしたな?」

「なんですかその言い草は、私は命の恩人ですよ! もう絶対に何があったか教えません!」

「……教えろよ」

「嫌ですー。このバーカバーカ!」

「こっちは怪我人なんだぞ。もっと優しくしろよ」

「嫌ですー。お馬鹿な先輩にはもう優しくなんてしませんー。べーっだ!」


「まぁまぁ。二人とも。こんなところでイチャつかなくても」


「「イチャついてません!」」


 木場の軽口に、優子と拓真が同時に叫んだ。


「……だが、まだ終わってはいない」

「そういえば、そうですね……舘山寺さん」


「ああ、メッツラという君が出会ったサイクロ族と、亜女性のアムタウ族のギメガミの姿が無かった……」


「まだ、戦いは完全には終わっていませんね……」

「ああ、そうだな」


 拓真と舘山寺が同時に大きなため息をつき、救援が来るまでボートの上で皆は静かに過ごした。

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