第12話《魔本導くアナザーワールド》リプレイ⑦


~イリュージョンキング・茨王子登場~


 PCたちを待ち受けていたのは、流れるような金髪の若者だった。

 彼はきらびやかな司祭服をまとい、城の前に立ちはだかる。

 しかし――何故かその頭には獣耳がついていた。

 (なお、獣耳は楠木蓮にもついていた。)


水島七里:茨木童子

GM:に、にんげんです!

水島七里:茨木王子


茨王子:「ようこそ、女神に導かれし愚か者の皆さん。うしろの駄犬の飼い主です。イリュージョンキング改め《ウルフズキング》とでも名乗らせて頂きましょうか」



GM:というわけで、楠木くんの上司の登場です

椎名 護:(うわぁ)

阿東一価:(前に出た演劇にこんな感じの衣装あったなぁ)

茨王子:「あ、この衣装は女神の趣味ですんで勘違いしないように!」

ヒドゥン:「キングに拘る辺り小物臭が半端なくて敵対する支部としては微妙な心境だ」

GM:小物ですからね。


~気を取り直して2~

 意外とざっくばらんな話しぶりのセルリーダーから、PCたちはこの世界の真実について聞かされます。


茨王子:「とはいえ狼を生み出してるのは私じゃないんですけどね……」

阿東一価:「あ、違うんだ」

茨王子:「そりゃそうですよ。あれは女神が自分で勝手にやってるだけですよ」

椎名 護:「あー……」

水島七里:「演出家ですねぇ」

茨王子:「困った子ですよねえ。私はただ、人狼の王、という配役なだけです。そういう能力はありません」

水島七里:「つまりあなたの役割は"救世主と戦う"事。もっと言うなら”救世主”と戦って負ける事」

茨王子:「役割に関しましては、支部長殿の仰る通りです。ほかに何か質問がありますか? こちらとしてもとっとと現代に帰還したいので、てっとり早く済ませましょう」


~小林茉莉の行方~


阿東一価:「あ、はいはい。クラスメイトの子がそちらにいると思うんですが分かります?」

茨王子:「茉莉さんのことですか? この建物の中にいますよ」

阿東一価:「あ、それが確認出来たらオッケーです」

茨王子:「そうですか。彼女の名誉のために、指一本触れてません。一日三食昼寝・散歩つきで生活していただいております」

椎名 護:「あっ、思ってたより親切」

阿東一価:「散歩」

茨王子:「健康は大事ですから。とくにこんなヘンな世界ではね」

水島七里:「あの携帯も女神の演出ですかね、本当に厄介な事です」

茨王子:「最近、異世界ものの携帯電話でチートする小説を読んで、ハマったらしいですよ」

椎名 護:(あの子、そんな頭弱い子だっけ……)


~演出に乗ってくれる阿東くん~


阿東一価:「……んじゃ、折角なので」イージーエフェクト七色の声を使って。コホンと咳払いし。「人狼の王よ、迷いの森を越えてここまでやって来た! 村人達と、我が友人とを返してもらおう!」


椎名 護:(えっ、乗るのそれ)

阿東一価:(まぁこの際)

椎名 護:(まぁ、いいけど)

ヒドゥン:(僕は"ふくろ")

阿東一価:ふくろてwww


茨王子:「おっ、いいですね! キミ、見たことある顔だな~。私は美形しか記憶に残さないたちなんですけど、好敵手として認めましょう! 『よく来たな救世主たち。我が牙を受け……果たして生きて帰ることができるかな!?』」


GM:というわけでクライマックス……でよろしいかな?

阿東一価:クライマックスなのかwww いやまぁ、ノリで前口上言ったしもういいやw

GM:何かしたいことがあれば、茨君は待ってくれるよ。

椎名 護:承知。シーン切り替えて再エントリー?

GM:そうですね。このままだと、茨&楠木の二人のみとの戦闘になります

ヒドゥン:女神を倒したいLv3。つまり呼び出せる、女神も

椎名 護:……あー……

GM:そうですね。クライマックスに入ってから呼びだせば、出てくると思います※


※ただ……。このとき、GMはものすごく思案していた。真実を聞いた以上、展開的には、プレイヤーが女神のことを倒す、という選択肢をとることも想定済みだった。なので、女神のキャラクターデータも用意していた。だが……。


~女神を倒すかどうかについて議論~


 女神を倒す、という選択肢に気がついたPCたち。

 このまま茨&楠木と戦闘に入り二人を倒すか、それとも女神を倒すのか。


椎名 護:……それもいいか。……帰れるのかな

阿東一価:実際召喚は出来るしねぇ

ヒドゥン:ただ戦う理由も無い

椎名 護:このまま気ままに現実世界の人間を誘拐され続けても困るしなぁ

GM:女神がいなくなれば、ここに連れてこられたすべての人が現実に帰れます※


 ※しまった、後押しをしてしまった!


阿東一価:帰りたいって言ってる人を帰したら、あとは本自体を封印、でも良さそうだしなぁ

ヒドゥン:いや、たぶんこの本は僕と同じ構造だ

阿東一価:えっ

ヒドゥン:本はチョウチンアンコウのチョウチンに過ぎない、恐らくはだけど

阿東一価:あー……

椎名 護:本は割とフレキシブルに動くんじゃないかな。図書館だったり、古本屋だったり

ヒドゥン:自分の世界を作ってそこに引き籠っている女神は好き勝手に本を生み出してばらまける

阿東一価:まぁでも入り口を閉じる意味は……あるのか? 人狼の王さん、どっからあの本手に入れたんだろ。聞いてみる?


~本の入手方法について~


 PCの疑問に、茨王子が答えてくれます。

 その答えは、茨のセル運営方針にも関わるものでした。

 (そのあたり、正直にいうと考えてなかったので、実際は即興でした。)


茨王子:「本ですか?」

阿東一価:「楠木さんも本に触ったみたいでしたけど」

茨王子:「あれは私が中学校の図書室に忍び込んで、拝借して参りました」

阿東一価:「……どうしてまた」

茨王子:「もともと一連の行方不明事件が怪しいなあ、と思ってたんですよ。警察やUGNが忙しいみたいだったので、独自調査をしておりました。もしも我々もあなた方も見知らぬオーヴァードの仕業なら、仲間にできるかもしれないですからね」※


※茨は積極的にセルに味方を引き入れようとしています。集めるのはどこにも仲間のいないはぐれ者ばかり。どこにも居場所のない者は、自分の意志でフリーでいることも多いですが、居場所がほしいけれど迎え入れてくれる人がいない、と感じている人たちも多いからです。そういう人たちを上手く手懐ければ……という思考でした。


ヒドゥン:「うちも人手少ないからなあ……」

阿東一価:「で、結局はよく分からん奴の仕業だったと」

茨王子:「ええ。事件のあらゆるところに本がかかわっていることを突き止めたんです。バカでかくて重たい本です。たぶんアレ、アレそのものが女神様なんじゃないですかね?」

ヒドゥン:「六法全書の方がまだ役に立ちそうだが……50kg近い本を喫茶店で広げてるやつは頭がおかしい」


~確かに~


 この疑問に答えるために、名案を思いつきました。


GM:ウェイトリフティング部だったらしいです(適当)

ヒドゥン:喫茶店だっつってんだろw

GM:川原「この本なら喫茶店でも鍛えられる」

ヒドゥン:読書してたって書いてあんだろw

GM:川原「くっ……一ページをめくる重さで……あらゆる筋肉が鍛えられていく……!」

阿東一価:指が疲れるだけのような気もw

ヒドゥン:そんな本を14歳の少女が読むかw よし、だいたいツッコんだので俺は満足だ

GM:司書の先生「茉莉さん……! この本をしまいたいんだけど凄く重いの! 手伝ってくれない!?」

椎名 護:……台車使え

GM:茉莉「無理です!」

GM:司書の先生「体育のセンセイを呼んで来るわ、そこで待ってて頂戴!」


 それが、茉莉さんを見かけた最後の姿であった。


~本は自在に動くこともできるのです、としといたほうがいいと思います~


椎名 護:「……それ、封印できそうです?」 と支部長に聞いてみるけど多分無理だろうなぁ

阿東一価:飲み込んだら吐き出したしなー

GM:吐き出したのは、この世界に内側から飲み込まれそうになったからですね

阿東一価:うーん、UGNとしての立場としては女神倒しとく方がいいのかな。阿東的にはどっちでもいいんだけど

ヒドゥン:ぶっちゃけ女神が本体か本が本体かによって対処が異なるし

阿東一価:二位一体的な存在なんでしょ

GM:女神は本であり本が女神なのです。データとしてはEロイス:妄念の姿を使用しております

ヒドゥン:いや、夢野百合子はもう死んでるって事か

阿東一価:ぶっちゃけたな、EXジャームなのかやっぱし。しかし百合子さんが何故女神と同化してんのかはよく分からんが

GM:訊いてみる? さらっとネタばらしする?

ヒドゥン:エンディングで聞こうか

椎名 護:そうね、断末魔できっと言ってくれることだろう

GM:それもまた一興


 というわけで、次回はクライマックスフェイズとなります。

 女神を呼びだし、そして戦った結果は……?

 GMが女神呼びだしを躊躇った理由はなんなのか?


 続く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る