繋がりをもとめて

夜久燐

1


 月明かりの下。潮風の吹く砂浜で俺達は今日も会う。



 親の転勤の都合で折角受かった高校を転校することになった。

 今までにも数回転校を経験している俺は多少の悲しさはあるが、休日になら会えなくわない距離の転校ということもあって、案外すんなりとその現実を受け入れた。

 引越した先は今までよりは少し田舎で高校も多いわけではない為、無難に一番近い高校に行くことにした。


 友達もそれなりにでき、今まで同様にテニス部に入り、図書委員会に入った。

 そして誰に聞いたでもなく、このクラスで生活していてなんとなくわかった事は、クラス内にいじめが存在する事だった。

 特に大きな問題は起こさなかった。ただ少しぶつかってみたり、足をひっかけてみたり。一つ一つは小さいものだけれど見ていていい気にはならなかった。

「なぁ。」

 俺は気になった末にクラスで一番仲良くなった、佐久間に聞くことにした。

「ん?どーした。」

「あのさ、同じクラスの竹中真咲ってなんでいじめられてんの?」

「あーあいつか...」

 佐久間はそう言いながら頭をかいた。

「あっいや、言いずらかったらいいんだけどさ、俺なんも知らないからなんでだろって。」

「いや別言い大丈夫だけど。あれば...」

 結論を言えば何もなかったら。竹中真咲が何か悪い事をしたとかそういうこともなく、入学当初から大人しく、人と話さなかった竹中をただ面白い半分でいじってる奴らがいるという事だった。

 だからといって俺は何もしない。変に助けてクラスの中で標的が俺に変わるのは真っ平御免だし、変に手を出して悪化させるのも竹中の為にはならない。

 可哀想にと憐れむのも違うと思い、結局何の為に聞いたかわからないものとなった。

 この対応が人としてどうかと問われれば、よくないことだとわかってはいるけれど、そこで英雄の様に立ち向かうほどの良心も勇気も、俺は持ち合わせてはいなかった。





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