おっさんが行く、異世界転生

Holly

おっさん死ぬ

仕事に疲れて帰宅。

まったく、最近は歳のせいか疲れが溜まりやすくて困る。昔々の暗黒時代は二徹三徹当たり前だったのに……。まぁ、ただブラック企業生活に慣れていただけだろうけど。

そこそこ遅めの男飯をかっ込んだ後は、汗を流すために風呂場へ直行。烏の行水とばかりにシャワーをざっと浴び、暖まった体でパソコンにダッシュ。やるのは日課のゲーム。それもそろそろサービスが終わるVRMMO、"天地創造"。リアルを追求したMMOで、ゲームと言うより別世界への移住のように感じるこれは、ゲームスキルの他にリアルスキルも作用する。賛否両論別れたが、それでも生き残った事が何よりの答えだ。もっとゲームらしいVRMMOがあったにも関わらず、決して多くはないが、一定数存在したのはつまりそういう事だ。


━━ソフト『天地創造』を起動しますか?

Yes/No━━


「Yes」


若干旧型になってきてるヘッドギアを装着し、天地創造に入り込む。



▲▼▲▼▲▼▲



入って直ぐに目に付くのは、前回のログアウト地点である馴染みの、ちょっとコジャレた宿、屋………?いや、ここは、こ、こは……?


『いらっしゃい。』


真っ白い、全く見た事のない部屋で、声が聞こえる。そちらに目を向けると、見覚えのある姿。


「お前は、いやあなた様は」


『良いよ、堅苦しいのはなしで。普通で、ね?さて、薄々所か普通に感付いてるだろうけど、僕は"天地創造"での創造神、アトゥム・クヌム・プタハ。まぁ気軽にアトゥムとでも呼んでくれ。』


軽い口調で、しかし覇気のような力を伴う言葉を紡ぐアトゥム。彼(彼女?)は"天地創造"の舞台となった世界、ジェプトを創ったと言われる神だ。まぁ、そういう設定で、適当に神話の創造神の名前を貼っつけただけの存在。しかし、今ここに居るのが神である事は、一緒の空間に居るだけで分かる。


『神って言うのは、それこそ八百万に存在する。基本的に知的生命体の願いや祈り、その他消去法による存在の確定だって、神が生まれるきっかけになる。僕の場合は、NPCに入れられたAIが居るって信じたから生まれた。』


「あぁ、うん。神って所は疑ってなかったから、余り驚きはしねぇが、心を詠むのはご遠慮願いたいね。」


『ごめんね。これゲームで言う所の、切り替え不可のパッシブスキルだからね。止めたくても止められないのが現状。』


「そうかい、ならしゃあねぇな。そんで今更だが、俺は何でここに居る?」


ゲームにログインしたって所までなら覚えてるんだが、その先が………。

すると、アトゥムは少し気の毒そうな顔をして、


『"天地創造"にログインと同時に大規模な停電。君はその影響により死んだ。』


「そりゃ………。いやまぁ、死んだのはしょうがないとしても、ここに居る理由は?」


『……大停電のせいで、君の魂が"天地創造"に取り残された。だから、僕はそのケアをしに、ここに来た。』

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