第61話 すれ違いデート
「……おせぇな環奈……」
S市中央区にある地下鉄駅の近く、倉庫跡を利用したオシャレなカフェで席を取って環奈を待っていた。既にアイスラテとドーナツを1つずつ頼んで、半分ぐらい楽しんでしまった。いやここのドーナツ美味いな、珈琲と凄い合う。え、ブラック? 無理無理。そこまで大人じゃない。お砂糖も無いと飲めません。
そこ、笑うんじゃない。
楽しみ方は人それぞれ、イイネ。
「…………」
ドーナツの残り半分を天井へスロウ。
「喰いモン投げんな。お前のだろ」
やはり環奈がいた。
何を思ってか影のまま移動して天井から見ていやがった。
ちゃんと店の入り口戻ってから入れよ。そのドーナツやるから。
「察し良すぎるだろお前……」
「バレないと思ってたのか馬鹿め」
「るっせぇ……あ、水どうも。コイツと同じのを。ドーナツは2つ」
「俺はも一つ、何かオススメを」
環奈にしちゃ偉い小食な注文したな。
前に喰い行った時は一気に20万分全部注文したくせに。
「んだよ……私だってそんな四六時中たらふく喰ってるわけじゃないぞ」
「そも環奈が喫茶店なんて洒落た名詞使い出すとは思わなかったわ。別におかしいってわけじゃないが。まぁアレ、いっぱい食べる君が"好き"~♪」
「ブフッ!?」
「……」
テメェ綺麗に吹き掛けくれたなチクショウ。
「なっ! 何言ってんだお前!」
「リアクションがでかい……」
「お前のせいだろ!?」
「何が……」
とりあえず《分子解離》、霧散させて強制乾燥……うん、ニオイも消えた。
「そ、んな
「別にカップルでもないし
何故ブッた!?
何故影でブッたお前!?
首真逆向いたぞ!?
「カ、カップル言うのも禁止ダ!」
「んだよお前……」
首戻さんと。
そうそうあんま
「
戻った。
「あ"ぁぉおぅ……お"ぉう……首が……」
オヤジ臭い反応しか出来ねぇ……。
「……ってぇ~何顔紅くしてんの」
「ッ!? し、してねぇし!? 首飛ばすぞ!?」
「止めーや分かったから。お前いちいち言う事やる事本気だよな……」
「……してねぇし。顔紅くねぇし!」
何なんだよいきなり。
反応がまさに恋する乙女だが、俺が人に好かれる様な男じゃない事は察してる。
とすれば、これも何らかの状態異常か。
またどっかの色恋馬鹿な
環奈、お前見えないとこに対して無防備過ぎるぞ。
後でリトラ通じて会社に文句言ってやる。
日常下に於いて他の
とりま適当に話合わせながら……。
『ジェイク』
『既にスキャンは完了している。しかし……』
『……どうした』
『……昨晩と同じく精神操作の類いが施されている。能動者は、不明だ』
『不明だ? 何で、特定出来ないのか』
『能力を使用した痕跡が見受けられない。恐らくは言葉での間接的作用だ』
『チッ、面倒な』
『……"私"よ』
『何だ』
『……なに、その少女が好きなのだなと再確認したまでの事』
『んだそりゃ。まぁ見てくれは良いし、ぶっちゃけ好みなんだがな。俺なんかで釣り合うわけねーだろ。環奈はダチだダチ。夢見る時代は過ぎ去ったんダッ』
『………………そうか』
『まぁ、そうとなりゃ適当に取り合って治すしかねぇな』
『では、任せよう。私は戦闘シミュレータのテストに徹する』
『おう、お疲れ』
「
「だろ?」
「こりゃ
「能力フル活用して探ったんだぜ。中々ねぇぞ、この独特な雰囲気の洒落た店」
「……神鵺は、こう言うのが好きなのか……」
「……んー?」
「な、んだよニマニマしやがって」
そぉんなニマニマしてたかなぁ?
「まぁ、そうだな。こんな風に隠れ家っぽい店でゆっくり寛ぐ時間も良いな」
「……そうか……」
「環奈はどうなんだぃ」
「うぇっ、私?」
「こう言う店、好みなん?」
まぁ、環奈は店の雰囲気とかよりは味を気にする方かね。
「……そうだな……一風変わった内装だし、たまに寄ってくぐらいはしたいとこだな」
意外にもしっかり雰囲気まで見ていらっしゃった。
ってか、そうか。コイツってカッコいいに固執するほどの見た目派だったな。
「そりゃ良かった」
……今のところはおかしな行動が見受けられはしないが、何時何処で何を起こすかも分からん。
常に意識を環奈へ向け、どんな時でも対応出来る様にせねば。
「……な、なぁ神鵺」
む、遂に。
「何だ」
「神鵺って、その、前にバトリスでミキとアレしてたわけなんだが……やっぱそっち系のが好みなのか」
「…………」
( 'ω')ふぁっ。
「そっちって、どっち」
「いや、だから、同い歳以上が良いのかなって」
「…………」
( 'ω')いきなり何聞いてんコイツ。
「ダチとして気になるんだよ! その、好みのタイプとか……」
「……あー……」
まぁ、典型的な質問だな。
うーん性的に言えば同程度の身長で肉付き良い女、そうミキのような女が好みだが。性格的に言えばまさに環奈のような気を遣わないタイプがドストライクなんだよな。まぁアレ、一緒にいて落ち着けると言えば優のようなタイプだが。アレは馬鹿だし。リトラは論外。良い身体してるし美人ではあるがダメ。無い。信? ハハッ、リトラ一筋のガチ百合堕天使狙おうなんて無理無理。死ぬるわ。足立姉妹はどっちかと言うと妹感覚だしな。レミィ、レミィは何だ。嫁? いや結婚はしてないし。連れ子? まぁ良い、とにかくそう言う目で見る相手じゃない。
「……」
「そんな考えるものなのか……」
「……どのようなシチュエーションかで変わって来るが、性的な意味合いで言えばミキだ。セフレと言うヤツだな」
はい、ビンタ頂きました。
首があらぬ方向に曲がりました。
「そう言う事を言ってんじゃねぇ……」
「 で す よ ね 」
「その、何だ……か、彼女にするならどんなのが良いよ」
やはりそう来たか。
可哀想な。
どっかの誰かが変な事吹き込むせいでこんな事になったんだ、現状では変に失望させず、かつ後で恥ずかしくないようにしてやらないと。
そう、重要なワードは『やんわりと』だ。
「残念だがそう言うのは、無いなぁ」
「な、無いのか?」
「強いて言うなら、一緒にいて落ち着ける相手かね。気兼ね無く話出来て、隣にいても違和感無くて。あぁでもそうな。ふとした仕草にドキッとするようなら、それは彼女にしたいタイプに入るかも」
「……あるじゃん」
「あったな」
「……ッ! ま、まぁそう言うのがいたら、協力してやんよ。ダチ仲としてな!」
「んじゃそん時は頼もうかね」
「うぇぅ……お、おう。任せとけ」
こう言うとこは不器用だから可愛いんだよなぁチクショウ。バレバレ。頭わしゃわしゃしてやりたくなっちゃう。
とまぁ、アレコレ話してたわけだが。
『不明な個体を確認。認識阻害を掛ける』
「ッ!?」
「……エネミー!」
しまった。
環奈の事にばかり気を取られて周りの事を気にしていなかった。
何処かでパチンって音が聞こえた。
その瞬間、俺達の足元に
俺達の反応速度なら避ける事が出来るんだが。どういうわけか、穴は俺達のみを吸い込みやがった。これじゃ逃げる事は不可能だ。
『リトラすまんまた嵌められた! 今度は穴だ!』
『穴ぁ!?』
『特定頼む! 逃げられん!』
『えっ、ちょ!?』
俺達は、色彩が捻れ雑ざる異界への穴に落とされた。
その最中でも、俺の頭は環奈の事でいっぱいだった。
おいおい何だよ神条 神鵺、環奈にゾッコンじゃねぇか。まぁ、事実だからしょうがねーんだが。
「
方向転換出来ない環奈のもとへ飛び、見事キャッチ。
「ふぇっ!?」
「失礼! アレコレ気にするのは後だ!」
そのまま流れに身を任せ、二人で異世界へと飛ばされていく。
「ぜってぇー離れんなよ環奈!」
「あ、お、おう!?」
……前の時の事を思い出した。
優と一緒にマギアへ召喚された時もそうだ。俺、隣にいる奴を気に掛ける事出来たんだな。はぁ……しゃぁねぇ。こうなりゃとことん付き合うか。
* * *
「
「行きましたね」
「行った……」
店内の別のテーブルに、何故か神鵺達に気付かれないまま珈琲を嗜む足立姉妹と少女が座っていた。
「あの先で、黒幕的な事をすれば良いの?」
「そう」
少女は、何処ぞのロボアニメよろしく机を膝を付き、口許を隠す仕草をする。
「場は用意した、後は貴方達がイメージする通りに。良いね?」
「了解!」
「イエッサー」
「良い子だ」
そして足立姉妹も、同様に穴へと入って行く。
「……しっかりやんなさいよ。神鵺」
困惑する客達には目もくれず、少女はレジにお金を置いた。
「さっき消えた子達の分、払っとくね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます