第6話 Sweet Devil&Dirty Mouth
武具。それは知性に恵まれた者のみ利用する事を許された罪にして叡智の結晶である。
石から始まり、袋に硬いものを詰めたブラックジャック。刃と呼ばれるものは紀元前から存在し、中世にもなればそれなりに良い武器が渡っていったものだ。近世には銃が登場し、更には爆弾、戦車も出て来て世界大戦と来た。
様々な武器や等々が、変態染みた探求心の元に生み出されたのだ。
まったくもって、吐く程気持ちが良い。
ハローフレンズ、
俺は今、悪魔達の経営するアイテムショップを訪れている。
店内の様子は以外とシンプルに仕上がってて、コーデショップかと勘違いしてしまう小洒落た雰囲気だ。割と好きな感じだぜ。
勿論武具を主に扱っている為、剣に鞭、ハンマー、クナイ、刀、パワードアーマー、鎧、スニーキングスーツ、色んな武器や防具が陳列されている。これには何処ぞのゲーム小説を思い出す。
「
「ほぁー……銃刀法も何もあったもんじゃねぇな」
ちなみに場所は地球ではなく、異世界。
前にも悪魔が言っていた、空間だけを用意して作られた”
おっと、気になるモノを見付けたぞ?
「おっ、銃だ」
「21世紀ですからね。銃ぐらいありますよ」
白と金の装飾が美しい太陽の様な拳銃に、黒と銀の妖しい色合いが目を惹く月の様な拳銃。二丁一組らしい。
「
「地球には無い素材から作った一点物ですからね。これでもめっちゃ安いですよ」
「ふぅーん……」
見た目がカッコイイんで見惚れていると、横からえらくセクシィな口調の漢の声が聞こえてきた。
「あら、その武器に興味があるの?」
身の毛が逆立った。思わず身構えてしまった。
もしや、コイツは……。
このぴっちりスーツを着こなした髭面の屈強な漢は……!
「安心して、お客様に手は出さないわ。私がオーナーのオクマよ、よろしく」
オ
カ
マ
だ
!!!
だが常識が備わっていたようで助かった。
「ど、どうも……この武器えらく安いみたいっスけど、誰も買わないんスか」
「いいえ? 初回限定と言う事でサービス価格にしてるの。しかもそれ、ついさっき最終調整が済んだばかりの出来立てほやほやでね。ほんの30分前陳列したばかり。アナタ、ツイてるわよ」
クゥール……ストレング、痺れるぜオクマさん。
「……その指輪……アナタがシンヤね? さっき悪魔の一人が
「……へへっ、おかげさまで稼がせてもらいやした」
「もうそんな早く噂広まってるんですねー」
「あまり調子に乗らないように。
「……フンッ、来んなら来いって奴だぜ」
「良い気概ね……試し撃ち、してみる?」
おっと?
「良いの!?」
「実際に
「やるやるー!!!」
「一気に子供染みてきましたね
だって銃は男のロマンだもーん!!!
=== アタックステージ ===
紹介棚から降ろされた二丁の銃を手に持つ。
右手には白と金のアルバロ。左手には黒と銀のウルネラ。
互いに精神へ侵蝕して変異させる、生きた武器らしい。常両方装備していなければ使用者が壊れて果てに消えてしまうみたいだ。フッフゥー。
「制限時間は10分。難易度を選べるけど、どうする? 簡単なイージー、平均的な難易度のノーマル、難しめのハード、地獄を味わいたいならHELLがオススメよ?」
「じゃけんHELLでいきましょうや」
「即決ね。好きよそういう子」
ゾクゥ。
「それじゃ、頑張って」
突然足元に穴が空き、重力に従って落ちていった。
「なるほど、コイツは
ジャキッと両手をクロスさせて、準備完了。
カウントダウンが始まった。
≫ 3 ≪
≫ 2 ≪
≫ 1 ≪
≫ Go!! ≪
すかさず頭上へ銃身を向け、《
数撃ちゃ当たる戦法で3体撃破し、次は横へ向く。
羽の生えた丸っこい生き物が牙を剥いて迫って来ている。さっきは良く見えなかったが、コイツらが的か。
「ぃよっしゃ!」
腰の辺りから横へ《放射》。
更に肩甲骨の辺りから下へ《放射》。
即席の翼を落下速度緩和用に備えてヒアウィゴウ!!
「
コイツらの魅力は何と言っても多機能な所。
弾丸の代わりになるエネルギーがあればリロード無しで無限に撃てる上、手元のレバー操作で1発ずつの手動連射からフルオートへ切り替え可能。
ズカズカ撃ち続けながら標準を合わせ、100体を超える的を次々撃ち落としていく。
気持ち良い。
『キシャァアアッ!!!』
おっと、奴ら攻撃もしてくるのか。急加速して来やがった。
別に銃以外使っちゃいけない決まりも無いので、脚と拳も攻撃メニューに加えて迎撃と銃撃を繰り返す。
ヤベェ楽しくなってきた。俺も結構戦い好きなのかも知れない。
「もっと出来んだろ纏めて掛かって来いや丸坊共ぉ!!!!」
「……あの子、知識を力にしているのね」
「へ?」
戦いの様子を見ていたオクマが、呟いた。
「人間の世で遊ばれるゲームやアニメの動きに酷似しているのよ。あの子、飛躍して上昇した身体能力に任せてスタイリッシュを極めようとしているみたい」
「そ、そんなところまで分かるんですか……」
「銃の機能もフルに使おうとしているところから見て、彼は研究型ね。直感を感じる程の鋭い感覚はあるけど、何かの理由からかそれを確かめずにはいられない
「最早占いですね。私オクマさんが一つ分からなくなりました」
「オカマには謎が付き物なのよ……最終ステージへ差し掛かったわ。このタイミングで雑魚の掃除を終わらせるなんて、流石は、
コイツらは良い武器だ。俺の期待に十分応えてくれる。
鬱陶しくなったと思ったら自動で機能を切り替えて、銃口から《放射》エネルギーを固定して
割とダメージを喰らいもしたが、俺とコイツらの一騎当千な猛攻撃で大方片付いた。同時にようやっと地面へ到着。
残り時間、5分。
ズシンと施設が揺れた。
「おっと?」
翼の出力を上げて浮上すると、地面を喰い破って
『ギュゥゥウウウアァァァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』
壁を破壊せんと
細かい牙が乱雑に並び、特徴的な二本の出っ歯を備えたでっかい口からは、嫌な臭いがプンプン漂ってくる。
退化してるのか目玉は無く、代わりに口の周りから大量の触手がウネウネと蠢いている。
そして申し訳程度に三本ヒゲ。
一言で言うと、キモい鼠。
ウィンドウが表示され、奴の名が判明した。
≫スコアアタックHELL専用ボス[ダーティマウス]
「
これまた洒落の効いた名だ。
『ゥ”ウ”……ギュアッ! ギュアッ!』
うわ、よじ登って来よった。キモい。
上昇開始!
「ィハハハハハハハハ!!! ガンシューの世界に入ったみてぇだ!!!」
口の中へ向けてひたすらズカズカ撃つべし! 撃つべし! 撃つべぇし!!
たまに伸びて来る触手は
スピードが早くなったら足を攻撃して怯ませるべぇし!!
たまに出て来る雑魚もマメにお掃除すべぇし!!
『オ”ォ”ウ”……』
ん? 止まった……?
何口閉じてんねん。降参したか。
『ウ”ゥ”ゥ”ン”……!!』
いや違う。
この病人が突然気持ち悪くなってついついやってしまうような前兆は……ッ!?
「冗談じゃねぇ!?」
急上昇!
上がれ!! 上がれぇ!!!
『ゥ”ウ”ォ”オ”ォ”ォ”ォ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”!!!』
吐いたぁぁああああああああああああああ!!?!?
ヤバい逃げ切れねぇ!?
《
現状取り得る手法でこれを完全に無効化出来る術を考えたら、素晴らしい方法を思い付きやがった自分! 流石無駄な知識ばかり持ってる男!!
でも悪魔を連れて来てないから確証が持てない!
失敗したら絶対失神コース! 汚物はもう被りたくない!!
この身尽きるか汚物を被るか!
ドッチも嫌だぁぁあああああああああああああああ!!!!!!
「うぉぉぉおおおおおおおおお!!?!?!?」
解除した瞬間両武器から特大の《
押し留めている間のコンマ1秒すら油断が許されない世界で、1cm×1cmの一部空間内にある原子が持つ速度情報を《情報操作》で無理矢理亜光速の手前に、つまり核融合を起こすギリッギリ手前まで書き換える!!!
この状態なら”アレ”が出来るはずだ、《
纏めて消え去るが良い!
「《
脳が焼き切れ兼ねない演算速度で計算して形成した”反物質”が持つ反粒子と、その周りに隣接して存在する物質 (つまりは空気)の持つ粒子との衝突による”対消滅”で変換効率100%の純粋で膨大なエネルギーを生成。それをソックリそのまんま相手にぶち込む究極の
「もう二度と汚物なんぞ被らねぇぞチクショウがぁぁあああああ!!!」
「……一体何があったの?」
「人のお腹頭から貫いて内蔵撒いたんです」
「それは……嫌な事件だったわね」
危なかった。人生で二度目の汚物シャワーを浴びるところだった。こうしていなければ再び全身消毒コースだった。
ついでにと言っちゃ何だが、化物も消え去った。もっと言うと施設の半分までが消滅していた。全部エネルギーに変換されたんだ。
オクマさんすんません。
「良いのよ、元々壊れるの前提で作った施設だし。って貴方鼻血出てるわよ? 相当頭使ったのね」
羽を広げたオクマさんが降りてきた。
カッケェなー……見た目だけ。
「それよりどう? その子達、気に入ってくれた?」
「ぜぇ……ぜぇ……最高っすわ。チップも乗せるんでこれ売ってくんさい」
「あら、これは良い客ね。指輪を出して頂戴」
「ほいっ」
武器の料金814,600円を支払い、更にこちらの指定で100万相当のチップを支払った。どうやら指輪の中に保管されてるようで、その場で振り下ろす他に直接所定の場所へ送金も出来るらしい。便利だなぁ。
しかしこう言う店は実に良い。今後とも贔屓にさせて頂きたいな。
「
「金が要り様なのは無いと死にそうだったからなんで。余裕があると分かりゃぁ回すに限る。四肢や心臓に血を
「……お金の在り方をしっかり把握してる、出来た人間ね。その宝石は一体アナタの何処に惹かれたのかしら?」
「知らんとしか。ベルトとか他にも買いたい物リストが出来たんで、もちっと見ていきますわ」
「そう。ごゆっくりどうぞ」
穴の上へ戻った神鵺を尻目に、オクマは下を見やった。
必要以上の存在を生み出さない、ただの空間、”隔離世”。その世界は言わば暗黒に包まれた泡のようなもので、施設の外には果てを知らない闇が広がっている。
その世界端に、並大抵の事では発生しないはずの巨大な”綻び”が生じていた。破壊された壁を瞬時に修復した痕だ。
「……あの子だけは、怒らせないようにしなくちゃね」
―――― アイテム獲得 ――――
◆
ランク[S] 種別[射撃] 属性[闇/光]
:
意志を持ち、使用者と共鳴する事で通常以上の性能を引き出す、生きた武器。長時間使用して完全に同調すれば、意思の疎通も可能になる。
:
アルバロは、使用者の精神を
:
ウルネラは、使用者の精神を
:特殊機構[ノンマガジン]
使用者が弾丸の代わりとなるエネルギーを有している限り、リロード無しで無限に撃ち続ける事が出来る。エネルギーに属性が付随している場合、攻撃の属性は弾丸に依存する。
:特殊機構[オートスイッチ]
使用者の意志を汲み取って自在に機能を切り替える事が出来る。
:特殊機構[ブレイドハーツ]
使用者が持つエネルギーを銃口から固定された形で顕現し、刃として使用する事が可能。エネルギーに属性が付随している場合、攻撃の属性は刃に依存する。
「太陽と月を模した二丁一組の拳銃。使用者の精神を侵蝕し変異させる対照的な呪いを帯びており、両方を同時に装備していなければ徐々に使用者の精神が壊れ、果ては魂が朽ちてしまう」
◆バレットソウル 値段:478,900円
ランク[A] 種別[防具]
:特殊機構[リフレク:ガントレット]
:特殊機構[キックバウンス:レギンス/ブーツ]
射撃攻撃に対して脚攻撃を当てると、確率で命中力の高い反射攻撃を繰り出す。
「動きやすさを重視した軽金属鎧。腕と脚、腰と胸のみを守る作りで、技量の高いユーザーにとっては武器にもなる上級者用防具」
◆[ガンベルト] 値段:47,200円
ランク[C] 種別[補助品]
「通常のガンベルトよりも丈夫なベルト。お洒落にも使える便利な一品」
◆[ポケットイクイップ] 値段:562,700円
ランク[A] 種別[魔鉱]
「融合させる事で指輪をアップグレードさせる鉱石。使用者専用のガレージ型隔離世と繋がっており、意思に応じて隔離世内の武装を瞬時に召喚し装備する事が出来る。指輪から隔離世へ繋がる門を開く事も出来る」
―――――――データ―――――――
氏名:神条 神鵺 性別:男 年齢:18歳
職業:専門学生
クラス:
契約者:
クリスタル:
レベル:11
【ステータス】
筋力:A 敏捷:A+ 生命力:B
感覚:C+2 器用:C+3 知力:B+3
精神:C+2 幸運:B 容姿:C
【能力】
《思考世界:EX》
《放射:A》
《情報操作:A+》
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