第1章

小さな扉の向こう側

―――ある晴れた昼間のこと。

私は公園にいた。


あ、名前まだだったね。

『相名<アイナ> 凛』です、17歳。

高校には行ってない、祖父母と暮らしてます。

けど迷惑はかけたくないから、バイトしてる。

中卒で雇ってくれるところなんて少ないけどね・・・。


そんな日曜の昼。

いつものように近所にある大きめの公園に行ったんだけどー・・・


完全に来る時間をー・・・

ま・ち・が・え・た!!

あっちもこっちも『ファミリー』ばかりで・・・

「・・・余計辛くなるよー・・・」


『・・・クスクス、だったらこっちへおいでよ。』

「えっ!?」


不思議な男の子の声が聞こえた・・・

なのに、周りにそれらしく男の子はいなくてー・・・


「空耳かな・・・」


そう呟くと・・・


『君がいるべき場所は、そこじゃない。こっちだよ、さぁ早く・・・』


また『あの声』だっ!


「誰なのっ!? どこにいるのー・・・?こっちってどこなのー・・・?」


そう叫ぶと、


突然、前の小さな扉が眩しいぐらいに光って開いたの・・・


『その扉をくぐれば君はこっちへ来れる、だけど2度と元の世界へ帰れないから、

 ちゃんと考えてね。』


「あの声」の男の子がそう言った。


周りは誰も扉が光ってることなんて、気づきもしなかった。


気が付くと私は祖母に電話をかけていた。


「おばあちゃん。」

{凛ちゃんかい、どうしたの?}

「私、自立したい! だからもう私のこと探さないで、別に死のうなんて

 思ってなんかないから安心して。」

{何を言ってるだい?凛ちゃん。}

「おばあちゃん、今まで育ててくれてありがとうね、おじいちゃんにも

 そう伝えてね、本当にありがとう。 そして・・・さよなら、大好きだよ。」


涙が出そうになる前に、電話を切った。

切る前、祖母は何か言いたそうだったけど、無視した。


そして光を放つ、小さな扉の前に私は戻ってきた。


「ねぇ、もう後悔はない。私・・・あなたが言う『こっち』に連れてって。」

『分かった、じゃあその扉を開けたら、君はもう『こっちの世界』の住人だよ。』

「分かった。」


そしてドアに手をかけ、開けるとー・・・

私は光りに吸い込まれるように『こっちの世界』へ移動した。

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